君の名は。から始まる話【鑑賞・大英自然史博物館展】

始祖鳥!

過日上京の折、上野の国立科学博物館で2017年6月11日まで開催中の「大英自然史博物館展」に行ってきました。博物館に行くことは滅多にないのだけど、なぜかピンときたんですよね。予習として「乾燥標本収蔵1号室」 (リチャード・フォーティ著)を読んで臨んだくらいの気合の入りよう。

特製ドードーステッカーもゲットしました

予習はやはり効果的でした。始祖鳥化石くらいは知っていたけれど「所有者を次々に不幸に陥れる『呪われたアメジスト』」「違法捕獲したハクチョウの羽毛で作ったドードーの模型」「女性研究者ドロシア・ベイトが見つけたミオトラグスの骨」など実に興味深い。一つの標本から自然の奥深さと人が自然を知ろうとした歴史を感じられるのです。

驚いたのは後の調査でヒトとオランウータンの頭骨を加工した偽物と判明している「ピルトダウン人の頭骨」も展示されていたこと。捨てずに保存していたのか…。教訓の意味もあるんでしょうね。

会場にならぶ美しい昆虫や甲殻類の標本の中にはテレビや動物園で見た生き物もあった。そんな生物は今、生きている様子を映像で見ることができる。それでも標本を集める意味はあるのだろうか。意味はある、と「乾燥標本収蔵1号室」にはある。

分類学と体系学は、ある面ではたしかに切手収集のようなものだ。ただしそれは、利用者が手元にある標本を識別できるよう、目録に明確な識別項目を配列していくという意味においてのみの話である。その目録は、四〇億年におよぶ生命の歴史が生み出したことの総覧でもある。しかもその内容は、地球の健全さをはかる尺度となっている。それでもまだ価値がないというのだろうか。

標本から世界、地球にまで視野を広げることは今までなかった、と反省。世界には名前のついていない生き物もまだたくさんいるのだという。大英自然史博物館には「トカゲマン」「線虫マン」「海藻マン」などの本当に狭い範囲の専門家(失礼!)がいて、まず種を特定し、名をつけ、そこから生態を調べているのだそうだ。そこから人間の生活に役立つ発見があることもある。

一方で大規模な自然史博物館は、ただ自然界のカタログを提供するだけでなく、自然に対する良心をはぐくむ場所ともなるだろう。そこは後世の人々が、「わたしたちは何をしてきたのか?」という問いに対する答えを見出す唯一の場所となるだろうという場でもあったのだ。

振り返るに美術館、映画館などにはよく行くのに博物館にはこれまでほとんど足が向かなかったのは、展示物に変化がない様に思っていたからだった。目新しさがないというか。しかし「乾燥標本収蔵1号室」を読み、大英自然史博物館の実際の標本を見たら、標本の背景も気になってきた。想像力がいつの間にか欠如していたようだ。たまには博物館に行くのも悪くなさそう。企画展もやってるわけだし。

乾燥標本収蔵1号室 ―大英自然史博物館 迷宮への招待
NHK出版 (2012-07-31)
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エンジンがかかってきた話【鑑賞「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」】

前作はピンとこなかったんだけど、今作はグーッとノリが良くなった快作でした。

【作品紹介】
シリーズ累計興行収入1兆円突破、全世界No.1の記録を打ち立てた、『アベンジャーズ』シリーズのマーベル・スタジオ。その輝かしい正統派ヒーローたちの歴史に、最もヒーローらしくないヒーロー・チームが殴りこみ!常識破りで誰より自由、ヒーローと呼ぶにはあまりも頼りない、銀河一ヤバい愛されヤンキー・ヒーロー・チーム…その名は“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”。正義なんかクソくらえ!過激な個性がぶつかり合う、この宇宙の落ちこぼれ達を突き動かすのは、カネとその場のノリ。今、懐かしのゴキゲンなヒット曲に乗って、ユニークすぎる戦いが、ノリと笑いで銀河を揺らす!
【ストーリー】
“スター・ロード”ことピーター・クイルをリーダーに、凶暴なアライグマのロケット、マッチョな破壊王ドラックス、ツンデレ暗殺者ガモーラなど、たまたま出会ったノリで結成された宇宙の“はみ出し者”チーム、<ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー>。小遣い稼ぎに請けた仕事をきっかけに、強大な力を持つ“黄金の惑星”の指導者アイーシャ率いる無敵艦隊から総攻撃を受け、彼らの宇宙船ミラノ号は壊滅寸前に…。間一髪、ガーディアンズを救ったのは“ピーターの父親”と名乗る謎の男エゴと、触れただけで相手の感情が分かる能力を持つマンティスだった。仲間からの忠告にも関わらずエゴに魅了されていくピーターの姿を見て、次第にチームの絆に亀裂が…。 そこへ“ピーター育ての親”ヨンドゥが率いる宇宙海賊の襲撃や、さらに銀河全体を脅かす恐るべき陰謀が交錯していく。はたして、ピーターの出生に隠された衝撃の真実とは? そして、彼らは絆を取り戻し、銀河を救うことが出来るのか? その運命の鍵を握るのは、チーム一小さくてキュートな、ガーディアンズの最終兵“木”グルートだった…。

公式サイトより)

前作の感想で「メンバーが会話でなく行動で『仲間』になったのがいい。主人公ピーター・クイルに感情移入できなかった。次回作ではドラックス以外の内面を描いてほしい」と書いておりました。今作はまさにドンピシャ。ピーターの父親・エゴが現れ、彼の出自が話の中心になってました。「父殺し」というオーソドックスな展開なのだけど、人として必ず訪れる成長への通過儀礼でもあるわけで、主人公の成長には不可欠。ピーターに感情移入しやすい構造でした。だからって父を倒すときにあんなキャラクターに変身せんでもと思うわけだが。バカじゃないの?(注・褒めてます)

5人の仲間意識と個性を冒頭のアクションシーンで見せるのもうまい。小さなグルートを邪険にしないところにメンバー間の絆を感じさせました。タイトルが出た場面で心掴まれ、後半でピーターが「父殺し」を決意するときにフラッシュバックする仲間たちとの思い出に泣ける。メンバー5人、ピーターとエゴ(とヨンドゥ!)、ガモーラと妹・ネビュラなど、キャラクターの関係を追うと家族の絆というテーマが浮かび上がる。遠くの親戚より近くの他人、ですw。

表紙がイカす特別版パンフレット!

前作で違和感を感じた往年のヒット曲の使い方も今回はバッチリ。映像としての見た目の楽しさを補強し、作品テーマとの関連性も強かった。冒頭から流れる(セリフでも詞について語られる)のが米ニュージャージー州出身のロックバンド「ルッキング・グラス」の1972年のヒット曲「ブランディー」。「この曲知ってるわ、誰が歌ってるのかは知らんけど」程度の印象しかなかったポップナンバーだけど、今作を見てしまったらもう心に焼き付いてしまうことまちがいなし。音楽が本当に重要な要素になっていました。

と、そんなことを思いながら鑑賞後ポスターを改めて見たら、ピーターが左手の光線銃より高々と掲げた右手にソニーのウォークマンを持っていたのに気づいた。大事なオモチャを持ってカメラの前でキメてるみたい。子供か。バッカじゃないの?(注・絶賛しています)

前作ほど話の中心ではなかったものの、ドラックスも豪快さでいい味を出していた。ロケットの毒舌も笑えたし。仲間でワイワイ言いながら戦うメンバーたちが見ていて実に楽しい。マーベルの映画シリーズ「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」でチームプレイの楽しさを打ち出したのがこの「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズと今作ではっきり理解しました。「アベンジャーズ」はあくまで即席の、いわばドリームチーム、球技スポーツにおけるナショナルチームみたいなものなので。

パート3も予定されているそうなので、今作でちらりと登場した某大物俳優の見せ場も増えるかもしれません。エンジンがかかってきた感じですね。思春期になったグルートにも期待w。

結論が正反対だった話【鑑賞「ゴースト・イン・ザ・シェル」】

押井守のアニメ版第1作にビックリするくらい寄せてきながら、結末が真逆なのにもっとビックリですよ。

【作品紹介】
士郎正宗のコミックを押井守監督が映画化したSFアニメの傑作「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」を、ハリウッドで実写映画化。オリジナル作品の草薙素子に相当する主人公の少佐を、「アベンジャーズ」「LUCY ルーシー」などアクション映画でも活躍するスカーレット・ヨハンソンが演じ、少佐の上司・荒巻に、映画監督として世界的評価を受けるビートたけしが扮する。そのほか、少佐の片腕バトー役でデンマーク出身の俳優ピルウ・アスベック、テロ事件を企てる謎めいた男クゼにマイケル・ピット、オリジナルキャラクターのオウレイ博士役でフランスの名女優ジュリエット・ビノシュらが出演。監督は「スノーホワイト」のルパート・サンダース。日本語吹き替え版には田中敦子、大塚明夫、山寺宏一というアニメ版の声優が起用されている。脳とわずかな記憶を残して全身が機械化された、公安9課最強の捜査官・少佐は、全世界を揺るがすサイバーテロ事件を発端に記憶が呼び覚まされるが、そこには驚くべき過去が隠されていた。

映画.comより)

似た場面があるだけでなく、公安9課のキャストも「アニメキャラにここまで似た人をよく起用できたなぁ」と感嘆。スカーレット・ヨハンソンも悪くないし、バトー役、トグサ役の俳優とか笑っちゃうほどクリソツ。似てないのは荒巻課長役のビートたけしくらい。まぁあの髪型に頑張って寄せてきたとは思いましたがね…。

キングコング 髑髏島の巨神」でも思いましたが、日本のサブカルチャーへのリスペクトって昨今、予想以上に広く深くなってきた印象があります。日本のアニメやマンガ、ゲームで楽しんだ人たちがいよいよハリウッドの担い手になってきたんでしょうかね。

公式サイトの素っ気なさはどうしたもんでしょう。

でも文化の深いところまではまだ共有できてないのかなーと思わされるのが本作。タイトルにもある「ゴースト」の意味を狭めてしまったなあ。

「ゴースト」の意味って原作漫画版でも押井守版でもはっきりとは示されない。脳以外全てを機械化し、脳もネットワークと直接繋げられるようになった世界で、まだなお個人の中に残る他者と自分を分ける「何か」のように描かれる。

今作ではこれが「他者によって奪われた記憶」に狭められてしまった。それじゃあつまらない。オリジナル版での「ゴースト」は、USBメモリに収められるものではなかったんだよ。

もちろん今作をなるだけ多くの人に見てもらうために何かしらの改変は避けられない。わかりやすくすることは仕方がない。

でもSF的な面白さでいったら断然オリジナル版の方が上。来るべき未来社会とその社会における解放を描いたのだから。自分の過去を取り戻す今作の結末は、万人にわかりやすくはありましたが、SF映画としてはあまりに凡庸でした。

そうはいってもこの作品を全否定はできない。生身の人間が演じる「攻殻」世界はアニメ版とはまた違う魅力があった。テーマとしてはオリジナルに届かなかったけど「リブート版」「前日譚」と解釈したら悪くない気がするんです。

今作の続編が作られるかわからないけれど、もし次回作が作られたら、その時こそ素子を導く「人形使い」が登場しても悪くない気がする。「新劇場版」感想でも書いたようにアニメ攻殻はもう行き詰まっている感があるので。過去の成功に囚われた、というか。今回の素子を踏まえて個人と社会の新たな繋がり方を描いてほしい気がします。本当のお楽しみは続編で、かなぁ。

人間は虫ケラ以下だった話【鑑賞「キングコング:髑髏島の巨神」】

誰もが持ってる男の子魂(?)にグイグイ刺さる一本でした。

【作品紹介】
今回のキングコングは、とにかくデカい。31.6メートルの体長は過去に映画に登場したコングのなかでも最大級!冒頭から武装ヘリを腕のひと振りで弾き飛ばし、巨大怪獣とのバトルでは殴り、つかみかかり、引きちぎる!スピードとパワーを備えた超リアルなアクション映像がアドレナリンを放出させる、暴走!アクションアドベンチャー超大作。
【ストーリー】
未知生命体の存在を確認しようと、学者やカメラマン、軍人からなる調査隊が太平洋の孤島“スカル・アイランド(髑髏島)”にやって来る。そこに突如現れた島の巨大なる“守護神”キングコング。島を破壊したことで、“彼”を怒らせてしまった人間たちは究極のサバイバルを強いられる。しかし脅威はこれだけではなかった。狂暴にしてデカすぎる怪獣たちが、そこに潜んでいた!この島では、人類は虫けらに過ぎない…そう悟った時は遅かった。なすすべもなく逃げ惑う人間たち。彼らがやがて知ることになる、島の驚くべき秘密とは!? 果たして調査隊は、島から脱出することができるのか!?

公式ホームページより)

深みがあるお話ではありません。オリジナル版のような切ない結末もなし。そんなものハナから期待しちゃいない。怪獣たちが画面狭しと大暴れしてバカな人間たちをぶち殺してくれれば満足なのです(ヒドイ)。3Dで見た甲斐もあるってものです。吹き替えキャストのGACKTにだけは納得いかなかったが。彼はタフでも汗ひとつかかないイメージがあるんで、ジャングルの中を右往左往するキャラクターの声には合ってないんだよなぁ。どっちかというと宇宙服を着た戦士のイメージなんで。そもそも声の存在感もありすぎて結局最後までずーっとGACKT。違和感が残りました。

ウチのネコもあくびをするとき、こんなカオをしますw

納得しまくったのはコングに一歩も引けを取らなかったサミュエル・L・ジャクソン。馬鹿な人間の代表として大活躍、んもうどっちが人か大猿かわからんかったぞサミュエル。目力最高サミュエル。あの場面のために起用されたんだろうなぁサミュエル。信頼の証サミュエル。っていうか、この手の映画に出すぎだろサミュエル…DCEUにも出てね!お願い!

作品の舞台がベトナム戦争終結直後なのがちょっと新鮮。作品のトーンとして、古く懐かしい印象が出ましたね。過去の東宝特撮映画やハリウッド映画を見直しているようでもある。島に謎の部族が暮らしている設定なども一昔前の雰囲気でしたね。

一方で作中には今の日本文化の影響を感じさせる部分もあったのが興味深いところ。大蛇に前足がついたようなコングの宿敵「スカル・クローラー」はアニメ映画「新世紀エヴァンゲリオン(旧劇場版)」のエヴァ量産型に似てる…と思ったら、鑑賞後読んだパンフで監督がしっかり言及してましたw。宮崎駿「千と千尋の神隠し」のカオナシもモチーフなのだそう。プロローグで旧日本軍の兵士が登場するし、何よりエピローグですよ。どうやらマジでアイツらを登場させるつもりだな。

でもアイツらのうち、すでにリブートされたアイツ含め、コングとキャラクター設定が被り気味なのがいるんだけど、その辺はどうするつもりなのかしら。深く考えず楽しめばいいのかしら。そもそもこの「モンスターユニバース」、人間は添え物でしかなさそうなのでMCUやスター・ウォーズのようにストーリーを楽しむものでもない感じだし。原作も事実上ないから自由に話をつくれる分、話の連続性とかこだわらず、好き勝手に怪獣を暴れさせればいいと思います。でも怪獣の設定だけはオリジナルを尊重して欲しいなぁ。

夢は広く深い話【鑑賞「ひるね姫」】

監督名だけで興味があった一本。幅広い年齢層を楽しませようという意欲を感じた作品でした。

【作品紹介】
人はどうして夢を見るのだろうか。自分では気づかない無意識のストレスや心の乾き。心の中で足りなくなっている何かをサプリメントのように補ってくれるのが、夢の役割かもしれない。神山健治監督が最新作のモチーフに選んだのが、その「夢」だ。神山監督はこれまでSFやファンタジーなど、重厚な世界設定を構築しその中で人間ドラマを描いてきた。そんな神山が自ら原作・脚本を担い、監督する初の劇場オリジナルアニメーション。
【ストーリー】
岡山県倉敷市で父親と二人暮らしをしている森川ココネ。何の取り得も無い平凡な女子高生の彼女は、ついつい居眠りばかり。そんな彼女は最近、不思議なことに同じ夢ばかり見るようになる。
進路のこと、友達のこと、家族のこと…考えなければいけないことがたくさんある彼女は寝てばかりもいられない。無口で無愛想なココネの父親は、そんな彼女の様子を知ってか知らずか、自動車の改造にばかり明け暮れている。
2020年、東京オリンピックの3日前。突然父親が警察に逮捕され東京に連行される。どうしようもない父親ではあるが、そこまでの悪事を働いたとはどうしても思えない。ココネは次々と浮かび上がる謎を解決しようと、おさななじみの大学生モリオを連れて東京に向かう決意をする。その途上、彼女はいつも自分が見ている夢にこそ、事態を解決する鍵があることに気づく。
ココネは夢と現実をまたいだ不思議な旅に出る。その大きな冒険の末に見つけた、小さな真実とは…。

公式サイトより)

神山健治監督というとやはり「攻殻機動隊 S.A.C.」の人。高遠菜穂子の「精霊の守り人」も見たな。サイボーグ009のリメイク「009 RE:CYBORG」、オリジナル作「東のエデン」は見てませんw。今作は「東のエデン」に次ぐオリジナル作とのことなのだけど(「精霊の守り人」が例外なだけで)どちらかというと年齢若干高めな人たち向けなアニメーションをつくる人、という印象でした。

でも今作「ひるね姫」は現代を舞台にしたファンタジーといった趣で、予告を見る限り幅広い年齢層を意識した雰囲気を感じておりました。脱力気味な作品名も意外な感じ。

エンジンヘッドのフィギュア化希望…!

で、実際見たら、ほぼ現在と地続きの日本を舞台に巨大ロボも変形メカも出る(イェーイ!)ごたまぜ世界のお話でした。様々な要素を一つの世界にできるのはアニメならではですね。声のキャストは有名俳優を多く起用しているのだけど全く気づかなかった。高畑充希は歌もうまい…!

ココネの岡山弁はほっこりさせるし悪役らしき人物もどこか間が抜けていて過度な緊張感を持たせない。楽しく最後まで見れるんですね。一方で中盤までは主人公ココネが寝入る場面があって夢と現実がはっきり分かれていたのだけど、後半からは現実と夢が地続きに描写され、意図的に混乱させる仕組みに。話の展開を読ませない構成になっておりました。

正直、見ていて「あれ?」と思う場面もいくつかありました。特にココネの父が整備した自動運転機能付きサイドカー「ハーツ」。あの動きは「自動運転」より「自立運転」だよなぁ。でも思い出すとセリフで詳しく説明こそしないがハーツがなぜあんな動きをするかはわかるようになってはいました。解釈を観客に委ねる箇所は結構多い。そういう意味では観客に読み取り力を求める一本ではあります。エンディングも後日談でなく前日譚中心なのも異例な構成ではないかと。

あと、主人公の女子高生ココネは決して弱い存在でなく、自分をしっかり持っている感じ。冒険が終わってもさほど変化がなく、周囲を変えている。ぽやーんとした岡山弁を話すけど「攻殻機動隊」草薙素子少佐や「精霊の守り人」バルサに似た強い女性だったなぁと気づきました。実に主役ですね。

見方を観客に委ねる映画だけに解釈もいろいろできる気もします。モノづくりをする全ての人へのエール、もう会えない家族との交流。見直すたびに感想が違うかもしれません。それだけの許容力を感じた一本でした。細田守や新海誠だけじゃない、アニメ監督もいろいろな人が表に出てきたなぁ。