結論が正反対だった話【鑑賞「ゴースト・イン・ザ・シェル」】

押井守のアニメ版第1作にビックリするくらい寄せてきながら、結末が真逆なのにもっとビックリですよ。

【作品紹介】
士郎正宗のコミックを押井守監督が映画化したSFアニメの傑作「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」を、ハリウッドで実写映画化。オリジナル作品の草薙素子に相当する主人公の少佐を、「アベンジャーズ」「LUCY ルーシー」などアクション映画でも活躍するスカーレット・ヨハンソンが演じ、少佐の上司・荒巻に、映画監督として世界的評価を受けるビートたけしが扮する。そのほか、少佐の片腕バトー役でデンマーク出身の俳優ピルウ・アスベック、テロ事件を企てる謎めいた男クゼにマイケル・ピット、オリジナルキャラクターのオウレイ博士役でフランスの名女優ジュリエット・ビノシュらが出演。監督は「スノーホワイト」のルパート・サンダース。日本語吹き替え版には田中敦子、大塚明夫、山寺宏一というアニメ版の声優が起用されている。脳とわずかな記憶を残して全身が機械化された、公安9課最強の捜査官・少佐は、全世界を揺るがすサイバーテロ事件を発端に記憶が呼び覚まされるが、そこには驚くべき過去が隠されていた。

映画.comより)

似た場面があるだけでなく、公安9課のキャストも「アニメキャラにここまで似た人をよく起用できたなぁ」と感嘆。スカーレット・ヨハンソンも悪くないし、バトー役、トグサ役の俳優とか笑っちゃうほどクリソツ。似てないのは荒巻課長役のビートたけしくらい。まぁあの髪型に頑張って寄せてきたとは思いましたがね…。

キングコング 髑髏島の巨神」でも思いましたが、日本のサブカルチャーへのリスペクトって昨今、予想以上に広く深くなってきた印象があります。日本のアニメやマンガ、ゲームで楽しんだ人たちがいよいよハリウッドの担い手になってきたんでしょうかね。

公式サイトの素っ気なさはどうしたもんでしょう。

でも文化の深いところまではまだ共有できてないのかなーと思わされるのが本作。タイトルにもある「ゴースト」の意味を狭めてしまったなあ。

「ゴースト」の意味って原作漫画版でも押井守版でもはっきりとは示されない。脳以外全てを機械化し、脳もネットワークと直接繋げられるようになった世界で、まだなお個人の中に残る他者と自分を分ける「何か」のように描かれる。

今作ではこれが「他者によって奪われた記憶」に狭められてしまった。それじゃあつまらない。オリジナル版での「ゴースト」は、USBメモリに収められるものではなかったんだよ。

もちろん今作をなるだけ多くの人に見てもらうために何かしらの改変は避けられない。わかりやすくすることは仕方がない。

でもSF的な面白さでいったら断然オリジナル版の方が上。来るべき未来社会とその社会における解放を描いたのだから。自分の過去を取り戻す今作の結末は、万人にわかりやすくはありましたが、SF映画としてはあまりに凡庸でした。

そうはいってもこの作品を全否定はできない。生身の人間が演じる「攻殻」世界はアニメ版とはまた違う魅力があった。テーマとしてはオリジナルに届かなかったけど「リブート版」「前日譚」と解釈したら悪くない気がするんです。

今作の続編が作られるかわからないけれど、もし次回作が作られたら、その時こそ素子を導く「人形使い」が登場しても悪くない気がする。「新劇場版」感想でも書いたようにアニメ攻殻はもう行き詰まっている感があるので。過去の成功に囚われた、というか。今回の素子を踏まえて個人と社会の新たな繋がり方を描いてほしい気がします。本当のお楽しみは続編で、かなぁ。