手作り雑誌は面白い【Zine It! Vol.4 感想】

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12月15日に宮崎市であった手作り雑誌「Zine」の展示即売イベント「Zine It! Vol.4」。毎回顔を出して、面白げな雑誌を買っております。今回買ったものを紹介しつつ、簡単にレビューしようかな、と。

【あいすべきものたちへ 写真と絵とコメントの本】
作者が日常的に撮ってきたチョット気になる看板や品々「あいすべきもの」をまとめて紹介したZine。

「確かに気になる」と思わせるものから、「そう言われるとなんだか気になる」的なものまで、ほんわかしたイラストとあいまって読んで楽しいZineでした。

【あまくさしもしまとかみしま 近隣の島へ行ってみよう vol.1】
【Voyage Paris】
旅行記ものZineを2冊。「あまくさ〜」は天草、「Voyage〜」はパリへのトリップ。どちらも写真をふんだんに使い、旅の雰囲気が伝わる。どちらも最後は土産報告で締めているのも面白い。両方ともイラストも添えてあるんだけどイラストとZine自体の雰囲気が合っているのがイイですね。

【CINEMARGIN VOL.2】
映画評のZine。2013年に「見てよかった!」映画を紹介しています。変に気取らず、小難しくない文体で書いているのでサッと読めます。これ大事。手作り感あふれるZineでした。

【月刊 島崎和歌子】
タイトルだけで真っ先に購入を決めたZine(´Д` ) 人選だけで既に勝利。っていうか「月刊」シリーズでほんとに出てるんじゃないの?出てないの?っていうか「月刊」シリーズはまだ出てるの?(知りません)1ページ目にマツコ・デラックスの言葉として紹介している「意味のない美人」ってホントそうですよねこの人。ラフな感じのページデザインが「勢いだけで作りました感」があってまたよし、でした。

【僕の頭の中で思いついたこと】
ページレイアウトがとても整っていたZine。文章中心なので、文章を流す段を分割し、色を付けた見出しをつけ、余白と画像のバランスもページごとに工夫されている。レイアウトをちゃんとすると本当に読みやすいんだよなぁ。

【もじのうまれるところ】
【もじのうまれるとき】
同じ作者による、文字について考えた連作のZine。英語に見える日本語、日本語に見える英語、暗闇で書いた字、幼いころの字などを採録し、成長するにつれ字が汚くなったという作者が、自分の字を読むことに「自己との戯れ」を見出すのが実に面白い。「読めない文字は神聖だ」「私の字は私以外に読まれることを拒否している」なんて考えたこともなかった。悪筆家にとって自信が出るかも(?)

作者自身の独特(だが魅力的)な考え方があふれているのだが、よく考えるとこのZine、肝心の本文はきれいなフォントを使っている。この使い分けってどんな意味があるのか…それは読み手が答えを出してみましょうかね。

CIMG1900…購入したのは以上8冊。これ商業誌じゃないのっていうものからハンドメイドな感じのものまで一堂に集まる面白いイベントでした。

社会や人を変えるものとは【書評「メイカーズ」】

読み終わっても実際のところ半信半疑。本当に3Dプリンタが一家に一台の時代がくるんだろうか。ただ「人は『何かを作りたい』という強い欲望を持っている」というのは伝わってきたけど…。

【どんな本?】
「ロングテール」(未読)「フリー」(既読)などの著書がある米版「ワイヤード」編集長の最新刊。デジタル技術の進歩は「ものづくり」にも変化をもたらす、という話で、具体的には(1)パソコン上の3Dデータをそのまま立体化する「3Dプリンタ」による物づくり(2)ウェブを通じた製造委託サービスや資金集めによる物づくりーによって個人が大企業と同じ製造能力を持ちうるのだ、というのが筆者の考えだ。

【よかった点】
読み終わったときには、自分でも何か作りたい、と思わされた。できあがったときの充実感って確かに得難いものがある。…のだけど、自分が「作りたい」と今思っているのは、少なくとも立体物(3D)ではない、と気づいてもしまった。それこそ今書いている書評(文章)とか、ブログとか2Dのものなんだな。

【惜しかった点】
著者は「自分がほしい物を作ってそれを売る」ニッチなビジネスが先進国に広まっていく…と予想する。しかしスミマセン、「一家に一台3Dプリンタ」って世界は全く想像できない。だって使い道がわからないもの。

今の「2D」プリンタが、少なくとも日本で広まったのは「年賀状」があったからではないかな。「これが家で作れれば便利なのに」という立体物がまだ思い浮かばない(それが思い浮かべばビジネスチャンスかも?)。

ウェブを通じた製造委託サービスの成功例として本書で挙げられる「レゴのアクセサリ」「特殊な電子部品」「自動車」、著者が携わっている「飛行機ロボット」…どれも興味がない(重ね重ねスミマセン)。もちろんニッチなビジネスである以上、上記の物に興味がないことが「メイカーズ」ムーブメントが失敗するとイコールではない。「これは欲しい!」と思わせる物がいつかネットにでてくるかもしれないのだから。

【どう読むべきか】
3Dの物を作るのに今は興味がなくても、モニター上に映る2Dのもの(文章、写真、動画など)の創作はすでに一般に開放された。日本でも大手メーカーを飛び出して一人や数人で物づくりをしている若者がメディアで紹介され始めている。3Dプリンタも製造委託サービスも「もっと手軽につくりたい」「自分だけのものを作りたい」という欲望の産物だ。

この本で書かれている未来像はこじつけっぽく理想論的な気もするのだが(というか究極のDIYって感じでいかにもアメリカンな印象)、それは「自分が欲しいものを自分で作るようになると人がどう変わるか」があまり書かれていなかったからかもしれない。自分で体験するしかなさそうだ。「これを3Dプリンタで作りたい」という欲望がわいたとき、自分はどう変わるのだろうか。

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理想論の中にヒントはある?【書評「ディズニー こころをつかむ9つの秘密」】

「東京ディズニーランドの最寄り駅が『東京ディズニーランド前』でないのはなぜか?」という著者の質問に正解がわかるなら読まなくてもいい本。ちっとも答えが浮かばなかったので読んでみました。この答えにブランドを作り、育てることの本質が集約されている。

【どんな本?】
東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドの2期生として入社し、開業からマーケティング全般に関わった著者が学び、体現したディズニーのブランド力の秘密を紹介する本。

【よかった点】
「ブランド」会社の存在意義をどう社会に認知させるか、コントロールしていくか。この本では、著者が一貫して「これでもか、これでもか」と考えながらやってきたこと以上に、米側から言われた「やってはいけないこと」のエピソードが秀逸なのだ。ブランドを認知させるには攻めだけでなく「守り」も必要で、守ることで社会にブランドへの飢餓感を与えられるのだ(そしてそこにマネタイズの機会も生じる)。

【惜しかった点】
上司に「恵まれすぎ」というと著者への難癖になってしまうが、東京ディズニーランドの成功は、アメリカで確立したブランドを著者ら日本人が学び、発展させたもの。自分たちの会社のブランド(存在理由)は何か、を「再確認する」のは容易ではない気がする。その辺の苦労話、回答はこの本にはない。

【どう読めばいい?】
「ディズニーだからできた」で済まさず、一種の「理想形」として読むべき。全てでなくてもまねできる点はあるはずだ。その差異を探すのがいいかもしれない。東京ディズニーランドの裏話も得られてお得な一冊です。

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