まずは挑戦、という話

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最新の情報を知るのって大事ですね

宮崎市の産経大キャンパスであったHTML5の勉強会「HTML5で実現する未来のWEB@宮崎」に行ってきました。夕方から仕事だったので3セッションのうち第1、第2セッションまでしか聞けなかったけど大変刺激を受けました。

第1、第2セッションの技術的詳細は「Google Material Design」とか「Polymer」とか「Junaio」「Metaio Creator」などをググっていただくとよろしいかと思います。

一応現在、「企業のWEB担当」って感じの職務なわけですが、ITやWEBの世界のトレンドの変化は早いなぁというのが感想であります。これはつまり、第1セッションでも語られましたが、産業として「標準化」が完成していないためでしょうね。HTML5やGoogle Material Designなどは標準化への過程なのでしょう。

いっぽうでAR(拡張現実)などのような新技術も出てくる、と。そう考えるとWEBの完成形ってなかなか見えてこない気もする。

で、ですね。そんな流れを「追う」と考えると疲れるんだけど、自分のように駆け出しもいいところの人間からすると今はチャンスかなとも思うんですね。完成形までは見えてこないけど標準化の取り組みってのは意味が小さいわけではなくて、基本さえ押さえておけば少なくとも数年前の製作環境よりはやらなきゃいけないこと、理解しなくちゃいけないことは減っている。以前よりハードルは低くなって「これなら作れそう」って気分もしてくる。

まぁこういったセミナーで話を聞くと毎回そう思ってる気もするけどw

でもその「気分」に乗っかってまずは手を動かす、製作してみる。行動するって大事だなぁと思ったんですね。話聞いただけじゃダメですわやはり。

なので早速、第2セッションで紹介された「Junaio」をいじってみたらまぁ奥様(誰)、本当に簡単にARサンプルが作れましたよ!すごいねこりゃ!

なんでも挑戦(大袈裟か?)するのがやはり吉と再確認した日でした。登壇者の方々、そして主催者の皆様、お疲れ様でした。

日本の未来が見えてくる話【書評・なぜローカル経済から日本は甦るのか】

GとLが対立概念でないのがポイントでしょうね。
GとLが対立概念でないのがポイントでしょうね。

こちらの本の方が「里山資本主義」よりは考えさせ、読み応えもあった本でした。

経済を大きく「グローバル経済圏」「ローカル経済圏」の二つに分け、それぞれに応じた生存戦略を考えた本。
「グローバル経済圏」「ローカル経済圏」の関連は薄くなっている一方、日本のGDPの7割を占める「ローカル経済圏」の再生を訴え、特に「ローカル経済圏」では働く人が多くなるサービス産業が多いので労働生産性を上げることが大事と説く。

著者は産業再生機構で地方のバス会社や温泉などローカル企業の再生に取り組んだほか、グローバル企業オムロンの社外取締役なども務めているという。グローバルとローカル、どちらの面にも携わっているわけだ。

グローバル経済圏における望ましい環境というのは、昨今言われているような内容が中心だった。ただ、グローバル経済圏で闘うのが大企業、ローカル経済圏は中小企業、ではないのがポイントか。中小企業でもグローバル経済圏に出ることもあるし、全国に店を持つ巨大サービス企業はローカル経済圏で勝負しているのだ。そしてグローバル経済圏では「分野は小さくても世界一」という企業が望ましいのだとか。

日本再生のポイントは「ローカル経済圏」のあり方。グローバル経済圏の様な規模の拡大が効果的ではなく、「地域における密度の集約」がカギなのだという。「現実のビジネスの世界ではほとんどの産業で密度の経済性が効く」と断言している。

ただし対面で人がサービスを提供する産業が多いので、なんでもできる人が求められる。結果、特殊な技能を持つ人が必要とされないので賃金が上がりにくい。競争も不完全、という問題もある。著者は最低賃金を上げて企業の生産性を上げる、上げられない企業は救済せず、優良企業への労働移動を促進させることを説く。そして優良企業が腐敗しないよう、非営利ホールディングカンパニーによる経営モデルを構想している。また地方社会の集約化ーコンパクトシティも説いている。

「里山資本主義」より後に出た本なので「里山資本主義」にも触れているが、この本ではグローバルか里山かという視点には立っていない。グローバル経済圏で頑張る企業のために国内の競争環境を整える一方、日本は人口減社会なので里山にもマネー資本主義的な生産性の向上も必要だと著者は言う。いっぽうで「里山資本主義」では里山に暮らす人は一人何役もこなす、とさらっと書いているが(「だから経済学者リカードの比較優位論は成り立たない」とまでいうのは妙だけど)、地方に住む人が何でもするようになる理由もこの本ではきちんと裏付けている。

こういうバランス感覚のある主張は実に腑に落ちるなぁ。

経営者の視点で書かれた本なので、読み手側が労働者の立場から視点を変えない限り「自分には無関係の処方箋だ」と思うかもしれないが、あるべき社会を予想してそこで必要とされる人であるにはこんな本を読む必要もあると思うのです。

肩の力は抜いたほうがいい話【書評「里山資本主義」】

「里山資本主義」表紙
「はじめに」からイヤな予感はしたんですがね…

「主義」にしてしまったのが一番の問題だったか。肩肘張りすぎて論調が大きく狂っているのが痛い本だった。

グローバルな経済システムからなるべく独立し、地域社会を中心にした独自の経済圏をつくろうという主張自体、決して古いものではない。そこに「里山」という郷愁を誘うキーワードを振ったのが話題になった理由ではないか。

NHK広島と日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏の共著という形のこの本、NHK広島のスタッフによるルポと藻谷氏の解説という構成なのだが、読んでいて冷めてしまったのが「驚くなかれ」とか「なんと」などルポ中に頻発する前のめり表現だ。伝えられる地域社会の実態もデータ不足で、雇用がどれくらい増えたかなどのデータはない。

そもそもエネルギーや食料を自給する里山のルポの視点が「日本全体の需要はまかなえないだろうが、今の常識は疑ってみる必要がある」ではダメだよな。「日本全体の需要がまかなえるかも」ってとこまでいかないと、疑う必要がないでしょうに。スマートシティも研究段階なんだし。「里山資本主義はマネー資本主義のいいとこどり、サブシステム」と逃げを打ちつつ「経済100年の常識破り」って自賛してはシラケるだけである。

NHK取材陣はリーマンショックを機に発生した経済危機の実態を取材して「マネー資本主義」なる言葉をつくり今の世界経済を「やくざな経済」「マッチョな経済」と評している。けれど、「マネー資本主義」(正確に言うと株主資本主義だろうけど)は、加熱した面は修正されこそすれ、なくなることはないだろう。それをいくら貶しても意味がない。

著者らが紹介した事例を「主義」にしてしまうからおかしくなったのではないか。都会から地方へのライフスタイルの変化、でいいのだと思う。人との絆を大事にするスタイルは里山に限らず、都会でも広がっている。SNSなど普及したのもそれでしょ。それがあたかも世界を変える「思想」のように評するからおかしくなる。

余談だけど先日、藻谷氏の講演を聞く機会があった。そこでも当然、「里山資本主義」について触れていたのだが、そこでは「外貨を稼ぎつつ、エネルギーや食料などなるべく自給して金を地域で回すシステム」と紹介していた。

しかし…地域内に金を溜め込むような思想って「自分たちだけよければいい」という発想であって、現実的とは思えませんでしたね。ちょっと驚くくらいぞんざいな物の言い方に面食らったこともあり、この「主義」にはあまり良い印象を持てませんでした。

ただ「里山資本主義は一人でなんでもやる、一人多役の世界」という分析だけは、同じようにグローバル経済と地方のあり方を論じた本と通じる面がありましたので、次はその本の紹介です。

感じたものをどう生かすかという話【Zineと本のおはなし2】

こだわりを語る男ってカッコイイね
こだわりを語る男ってカッコイイね

前回もお邪魔したトークイベント「Zineと本のおはなし」第2弾。今回は手作り雑誌「Zine」ではなく商業誌、商業本を中心にそこから影響を受けての街ばなしになったのが印象的でした。

今回は宮崎の代表的なデザイナーで喫茶店「on live」も営む金丸さん、洋服店「wagon」経営の錦田さん、それにイベント「zine it!」主催のデザイナー、ゴトウさんの3人が登場。人生のベテラン金丸さんの生い立ちを伺いつつ、3人が影響を受けた雑誌や本を紹介していきました。

金丸さんが紹介したのは50年前の輸入雑誌「seventeen」。錦田さんは「ポパイ」。二人とも雑誌からファッション、ひいてはライフスタイルを意識するようになったそう。

「服を売るのでなくスタイルを売っている」「街の中でライフスタイルを見つけて欲しい。それに応える店は宮崎にあるはず」という言葉はよかったです。

いっぽうでゴトウさんは「サードウェーブ・コーヒー」ムーブメント発祥の地・アメリカはポートランドに最近行った体験を紹介。スターバックスなど大規模チェーン店とはちがう店と客のコミュニケーションを打ち出した「サードウェーブ」もモノよりライフスタイルを提案する店なんでしょうね。

ゴトウさんが紹介したのは最近亡くなった赤瀬川原平の本。改築などで残ってしまった建物の一部など街の変なものを愛でる「超芸術トマソン」、新聞の3行広告から勝手に物語を作っていった「東京路上探検記」などを紹介して、身の回りにあるモノも見方を変えると面白いというよねという話で。

今回、3人に通じていたのは「地元をもっと楽しもう」ってことでしょうか。3人が紹介した雑誌や書籍はその土地の面白いものを紹介していたけれど、そこで紹介されたモノをただ持ってくるのでなく、自分たちが暮らす場を面白くしようという精神をこの3人は持ってきたんだなぁと思ったのでした。

午後7時から始まって終わったのが9時半。さすがに腹も減ったし家に晩御飯もあったので早々に退散しましたがw、自分が影響を受けたものをどう社会に還元するか、そんな意識立ても大事だなと思ったイベントでした。出演の3人、会場の喫茶Quantumさんお疲れ様でした。