君臨する王を迎えた話【鑑賞・Rhymester “King of Stage Vol.12″】

メジャーデビュー前からずーっとアルバムをチェックしてきている数少ないアーティスト、ヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」。通算10枚目の最新アルバム「Bitter,Sweet&Beautiful」(傑作!)リリースツアーが鹿児島であると知り、参加してまいりました。

今度はぜひ宮崎でも…!
今度はぜひ宮崎でも…!

ヒップホップのライブは今回が初めて。前作「ダーティーサイエンス」リリースツアーも鹿児島でやってたんですねー。ツアーは5大都市くらいでウチの近くじゃやってないんだろうと思い込んでおりました。反省。

会場のSR HALLはムムッというくらいの「小箱」。整理券番号二桁のチケットでしたので2列目でキング・オブ・ステージの全貌を全身で浴びてまいりました。いやぁ楽しかった素晴らしかった。汗かきすぎて体調も若干崩れた(涙)。次回からはタオル、着替え持参というか会場で事前購入必須ですね。

ヒップホップ、というかライムスのライブは武道館公演のDVDも見ていたのだけど、実際に参加して感じたのはヒップホップ特有のコール&レスポンスが実に楽しい、ということ。歌詞に韻が多いのがヒップホップの特徴だけど、それは単に「聞いてて面白い」程度のものと思っていた。でもライブではサビだけでなく韻も盛り上がるポイントなんだなあ。ライブで初めてわかったことでした。次は宮崎にも来てくれんかねー。

でかい夢を小さく伝えた話【鑑賞・WE ARE Perfume】

2014年10月から4カ国で行なわれた、テクノポップ・アイドル Perfume3度目のワールド・ツアードキュメント。彼女たちの来歴にも触れつつ、最終ニューヨーク公演まで密着する。

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視聴環境の違いって予想以上に大きいのです。

次はもっとよりよいライブにしようと、終演後も話し合うPerfumeの3人やスタッフ達の努力が印象的。特に終演後の3人は毎回、足や首を冷やしている。昨年、福岡でライブを見た際「すっげー細いピンヒール履いて踊ってるなぁ」と思っていたので、やはり体への負担は相当なものなんですね。

NY公演ヘのあこがれ、成功しての安堵。「次はマジソン・スクウェア・ガーデンだぁ!」と言い切ったあーちゃんは、まさにリーダーの器。途中何回か差し挟まれる3人のインタビューを通して、Perfumeは3人が絶妙のバランスで成り立っていることも伝わってきた。

アジアから欧米まで、ファンの熱狂っぷりも見ていて楽しい。シンガポールのライブに年配の白人カップルが見に来てたり、黒人の女の子が涙ぐみながらPerfumeへの思いを語る様など、彼女たちの人気は国籍を越えて広がっているのだ。

と、3人を中心にスタッフ、ファンをも含めた(つまり今作を鑑賞した我々も!)「WE ARE Perfume」なのだ…という内容にグッと来た一方、今作を「劇場作品」と位置付けると残念な点も少なくないのです。

まずは真っ暗な中での大画面&大音響で見る体験が生かされないこと。せっかくいい視聴環境でPerfumeを鑑賞できるのだから、もっと曲を聴きたかった。オープニングのSXSW(アメリカテキサス州で毎年3月行なわれる、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント)でのパフォーマンスはデジタル合成もしたいい感じの映像だったので、これは本編も期待できる!と思ったのだけど。NY公演がソフト化されているとはいえ、フルコーラスで聴けたのは各地のライブのラストで歌われた曲1曲だけなのは余りにもったいない。

決定的に残念なのは作品の雰囲気がどうもテレビっぽいこと。全体に緊張感が不足しているのだ。

この作品はテレビで「放映」されるのではなく、音響の良い暗い部屋にあるスクリーンに「上映」される。スクリーンを凝視しているこちら側は、ある程度の緊張感を持ちながら対峙することになる。

なのに各地の公演を紹介するのに毎回空港到着シーンから始まるのが非常に冗長なのだ。その土地土地を紹介するようなショットが続くのも毎回同じ。公演直前、3人が手を取り合って集中し、ステージに上がる→ライブ開幕、観客熱狂…というシーンも繰り返される。3人が集中する場面だけならまだしも、その後のライブ開幕シーンまで繰り返す必要はあっただろうか。

彼女たちは今回のツアー最終公演、ニューヨークに並々ならぬ思いがあった様子。ならば単純にツアーに同行した様子を続けるだけでなく、ニューヨークへ向けて緊張感を高めていく構成にできなかったか。(ハリセンボン近藤春菜はかなりの腕前だったが)ナレーションや各公演を繋ぐCGを使わず、最低限のテロップだけにしたら雰囲気が引き締まったかもしれない。観光シーンを挟む程度はアリかもしれないが…。

と映像作品としては劇場公開のスケールに届いていないのだが、Perfumeの奮闘っぷりは十分伝わる一作でした。最後に最新曲「STAR TRAIN」が流れるとツンとは来る。ファンは見とくべし。またライブ行きたくなるので!

創作とは前進だった話【鑑賞・日岡兼三展】

高鍋町美術館で2015年11月23日まで開催中の「日岡兼三展」を見てきました。

モダンな作品が多かったです
モダンな作品が多かったです

チラシによると日岡兼三氏は旧満州国生まれ。昭和29年から宮崎市に住み画塾を主催。創作の傍ら多くの美術大学生を輩出、平成15年に57歳で亡くなりました。輩出した学生の中には漫画家の東村アキコもいて、日岡氏との思い出を漫画「かくかくしかじか」にて描いています。最後の「描け」ってのがぐっと来るんですよねー。

しかし個人的には、青が強烈的なインスタレーション「時」を以前見ており、日岡兼三というとそっちの方が印象に残っていたのです。同じ人なのかなーピンとこないなーと思いながらの鑑賞でした。

会場は大きく3ブロック構成。第1室は「時」のインスタレーション、第2室と回廊でその他の作品を展示してしています。

「その他の絵画」とまとめましたが、内容は油彩水彩アクリルから彫刻、写真、CG(!)まで。「画壇のトリックスター」と呼ぶ人がいるほど、多彩なジャンルに挑戦した人だったようです。

母親を描いた油彩画に見て取れる確かな描写力のいっぽうで、抽象画のモダンさ、洗練さもまた魅力的。「虫」シリーズではキャンバスにみっちり描き込まれた線が力強く迫ってきました。

故人を知っている人が今も多い中、断片的な情報や作品だけを見て故人のことを会ってもないのに判断するのはアレなのかもしれませんが、生前の日岡氏が言っていたという「描け」という言葉の意味を考えてしまいました。

もちろん「基礎をしっかりつくれ」という学生達への叱咤もあるでしょうが、様々なジャンルに挑んでいた彼自身の作品群を見ていると「止まるな。前へ進め」という思いもあったのではと感じたのです。でなかったら、創作にCGは使わないんじゃないかな。

新しい創作への意欲、進み続ける意思を強く感じた展覧会でした。

 

コストと情熱でできている話【感想・Zine It! Vol.6(参加編)】

11月1日に第6回目があった手作り雑誌イベント「Zine It!」。6回目になる今回、初めてZineの作り手としても参加しました。

自宅用プリンターが「使える」のも発見でした

作るにあたっては「Done is better than Perfect」(完璧を期すより終わらせろ)を信条に、とにかく雑誌としてカタチにするのを目標にしておりました。QRコードを使ってネタを拡張させるのは当初からのアイデアでしたが…

Macで原稿を作り、印刷は自宅のインクジェットプリンターで。そこで考えさせられたのはコスト。A4用紙5枚を両面印刷し、二つ折りしてA5版20ページ(表紙、裏表紙含む)に挑戦したのですが、想像以上にインクが必要な事が分かり、「いくら趣味で作るとはいえそんなに金はかけられん!」と、予定していた冊数を減らすことにした次第。

最初から最後まで自分で作ることで、普段の仕事では考える機会の少なかったコストという概念について、改めて考えさせられました。狭い世界で社会人やってきてたな実際…!

面白いZineが今回も豊富!
面白いZineが今回も豊富!

で当日、会場に並んだ他のZineを見たら、まぁ自作の見劣りすることよ(ーー;)

自作に足りなかったのは「自分はコレがスキ!」「コレが面白いの!」というパッションかな。自分自身が買ったZine、会場で売り切れてたZineは、そんな作り手の熱量が感じられる内容だった気がします。

また各Zineの製本や装丁、包装などにも改めて目が向きました。読んでるだけではわからなかった、各人の工夫が目に飛び込んできましたね。

そうは言いつつも、自作を来場者が手に取ってくれたり、写真を見て「猫が可愛い…」とつぶやいてくれてるだけで、心情的にはかなりのモトが取れました^_^買ってくれた方もいらっしゃったようで、本当にありがとうございました。スタッフの方々お疲れ様でした!

儲けなんて最初から考えてなかったけど、自分で作って売るという行為は、ブログやSNSで自分の考えを表明するような行為とはまた別の緊張感、面白みがあるもんだと知りました。自分が買ったZineの感想はまた改めて…!

新たなヒーローを見た話【鑑賞「アントマン」】

んもうなんだよこれ、面白いじゃん!

「アイアンマン」「ソー」「キャプテン・アメリカ」などマーベルヒーローたちと世界観を同じにする「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」シリーズの最新作。身長を自由に縮められ、アリを操るヒーロー「アントマン」の活躍を描いた作品。すでに単独の続編の製作も決まったそうです。だろうね〜

【あらすじ】服役を終えたアダム・スコットは、仕事も家庭も失い絶体絶命。まっとうな人生を歩もうとするが前科者に世間の風は冷たい。やむなく昔の悪友たちの誘いに乗り、とある屋敷に忍び込み金庫を華麗に開けてみせるが、金庫の中には奇妙なスーツとヘルメットがあるだけだった。とりあえず盗み出し着てみると、急に身長がアリ並みに縮んでしまった!そしてヘルメット越しに話しかける謎の男の導きで窮地を脱したものの、その男はスコットが忍び込んだ家の主人ハンク・ピム博士だった。彼はスコットに、驚異の“スーツ”を着用し、想像を絶する特殊能力を持つ“アントマン”となるよう依頼する。最愛の娘のために<猛特訓を開始した彼は、本当のヒーローとなれるのか?

ラテンっぽい曲が映画全体に「あっ軽い」雰囲気を出してました。
ラテンっぽい曲が映画全体に「あっ軽い」雰囲気を出してました。

とはいえアナタ、よりによって名前が「アリ人間」ですよ(失笑)。見た目も正直古臭い。普通っぽいライダースーツにヘルメットはグロ気味だし。本当に面白いのか?…と思ってたんですよ。まぁ映画を見るまでは酷い名前だと思っていた(けど映画を見たらファンになった)「鉄人間(アイアンマン)」の例はありましたがねぇ…と思ってたんですよ。

いやぁ面白かったねぇ〜次回作が楽しみだこりゃ!

金持ちでもない天才でもない急に能力が身についたわけでもない、普通の人間(結構身は軽いし電子工学もかじっているけれど)が努力してヒーローになるのは、確かにMCUでは新機軸。主人公の取り巻きがオバカなのも変化が付いているし、なによりアントマンの戦いにかっこよさとバカっぽさが同居しているのが映画として素晴らしい。

身長1.5センチの超人2人が子供部屋で戦うクライマックスはハラハラ&爆笑。普通だったら「ここでドカーン!(大爆発)」「ここでバシャーン!(大飛沫)」という見せ場になるシーンが、この映画ではそうならず、むしろ真逆の爆笑シーンになってしまうのが実に実に素晴らしい。

主人公スコットと行動を共にする取り巻きたちも、オバカではあるが憎めないキャラクターなのも楽しい。演出と演技の妙ですね。敵アジトに忍び込むため気絶させた相手を最後には助けちゃうし、なによりスコット自身、スーツの力に驚いて一度は返そうとするイイ奴(小心者?)なのが素晴らしい。

MCUというシリーズに含まれることを生かして他の映画に登場したヒーローがゲスト出演してくれたり、次回作への引きもしっかり組み込んでいたり、かつ、ヒーロー映画では珍しい(漫画ではあるけど)主人公が「2代目」という設定も目新しくて素晴らしい。

そしてエピローグ、ダメ人間だったスコットが娘や前妻、前妻の新しい夫などといい関係になっているのもほっとさせられる(えげつないペットが1匹増えていたけれど)。

映画を見ている途中から「今度実際にアリを見たら、背中にアントマンが乗っていないか確かめねば!」なんて思わせてくれたりもして。そういう現実との地続き感はほかのMCU作品にはちょっとない。いやあ実に楽しい作品でした。

「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」では作品自体は楽しめたものの、MCUについていくのも大変だと思っていたけれど、また追う気が出てきましたよ。MCU侮りがたし…。