骨格を変えにかかった話【鑑賞「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」】

賛否両論だった本作。個人的には◎でした。そんなにダメだったかぁ?

【作品紹介】
前作『フォースの覚醒』は銀河の独裁をもくろむファースト・オーダーと、それに抵抗するレジスタンスが戦う世界。描かれたのは、フォースを巡るドラマであり、ジェダイ騎士唯一の生き残り、ルーク・スカイウォーカーを探し求める冒険だった。ラストシーンで、万感の思いを込めてルークにライトセーバーを差し出すレイ。彼女をじっと見つめるルーク。そこに言葉はない。観る者の胸を感動で満たし、同時に様々な想像をかき立てずにはいられなかった、このラストシーン。――そして物語は、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』へと受け継がれる。
『フォースの覚醒』の興奮はそのままに、戦慄の予感に満ちた『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』が幕を開ける。

公式サイトより)

否定する人たちの言い分もわからんではないのです。レイアが助かるあの能力はいかがなものかとか、中盤からレジスタンスを指揮するホルド提督が撤退作戦の意図を語らない理由がなかったとか、ベニチオ・デル・トロ演じるDJがあまりにチョイ役とか、フィンのエピソードは全く本編と絡まなかったとか、ファースト・オーダー最高指導者スノークのあまりにあっさりした退場とか。

ただ鑑賞しながら思ったのは、今作で「スター・ウォーズ」シリーズは骨格を変えにかかったな、ということ。これまで基本的に「スカイウォーカー家の物語」だったものを変えにかかっている。それは「フォース」とよばれる一種の才能を巡る解釈の変更でもある。

今作もフィンが良かったなぁ。

フォースを使いはじめたレイがスカイウォーカーの血筋とは無縁なこと、最後のシーンでレジスタンスの指輪をもらった無名の少年がフォースの片鱗を見せることなど、今作では「フォースを一番うまく使えるのはスカイウォーカー家」という暗黙の設定を崩そうとしている。旧シリーズのキャラクターから今シリーズのキャラクターたちへ、シリーズにおける主役交代をするために、シリーズの骨格から変えようとしていると感じたのです。

それは中盤、「エピソード6で見たぞこんな場面」という、スノークの御前でのレイとレンの対決で頂点に。そこからのストーリー展開はもう過去の作品をなぞるようなシリーズにはしない、という決意を感じさせました。

レジスタンスの逃走作戦という本筋に全く絡まなかったフィンのエピソードも、個人的には「1本で2度美味しいなこれ」と悪くない印象を持った。一連のマーベル映画(MCU)が別々の映画を絡めて一つの世界観を作るように、今作は1本の映画で作品世界を広げようとしているとみた。今作の見所はフォースの使い手も含む様々な立場の人が奮闘する、と思ったのです。スピンオフ作品「ローグ・ワン」にも通じますね。

そしてクライマックス。ルークがついにファースト・オーダーの前に登場した場面では「もういい!ここで終わって続きは次回で!」とゾクゾクしながらも話がまだ進む高揚感を味わいました。

次が一応の完結編ということですが、テロップで出るキャリー・フィッシャーへの追悼メッセージが泣ける。ソロが退場した前作、ルークが退場した今作に続いて、本当は次作で退場してもらうことでシリーズが新世代中心のものになる…のが一番綺麗な完結だったのだろうけど。シリーズに新しい風を入れようとした今作の挑戦精神にはエールを送ります。次も楽しみだ。