物語が人を救う話【鑑賞「クボ 二本の弦の秘密」】

日本の文化や風習をもとに紡がれた普遍的な物語が良かったですね。

【作品紹介】 アカデミー賞で『ズートピア』と共にノミネートされ脚光を浴びた本作。数々の傑作を送り出してきたスタジオライカが今回テーマに挑んだのは、古き日本の世界。情感あふれる日本の風景や風習を息を飲む美しさで描く壮大な旅絵巻は、呪いや犯した禁忌の代償など日本の寓話をベースに、大人にこそ観てほしい胸打つドラマとなっている。驚異の技術と超豪華ハリウッド声優陣で贈る圧巻のストップモーション最新作、遂に上陸!
【ストーリー】 三味線の音色で折り紙に命を与え意のままに操るという、不思議な力を持つ少年・クボ。幼い頃、闇の魔力を持つ祖父にねらわれ、クボを助けようとした父親は命を落とした。その時片目を奪われたクボは最果ての地まで逃れ母と暮らしていたが、更なる闇の刺客によって母さえも失くしてしまう。父母の仇を討つ旅に出たクボは、道中出会った面倒見の良いサルと、ノリは軽いが弓の名手のクワガタという仲間を得る。やがて自身が執拗に狙われる理由が最愛の母がかつて犯した悲しい罪にあることを知り──。かつて母と父に何があったのか?三味線に隠された秘密とは? 祖父である〈月の帝〉と相対したとき、全ては明らかとなる──。

公式サイトより)

話が進むにつれ、この映画が人形をコマ撮り撮影した「ストップモーションアニメ」というのに気づかなくなってくる。いったいどう撮影したのかわからない場面もあるし。でも思い出せば3Dアニメとは違う独特の空気感があるんですよね。

2018-01-12 11 58 56
宮崎でも公開延長になりました

大陸風のデザインも取り込んだ異国籍な作品世界ではあるけれど、ベースは折り紙や灯籠流しなど日本の文化、風習。がしゃどくろのようなモンスターも登場する。折り紙が動き出すビジュアルの面白さはストップモーションならではの面白さだし、灯籠流しに代表される死者の追悼は作品のテーマに通じている。死者を悼むとき、そこには死者への解釈、物語があるわけです。

クボが折り紙を動かして語るのは父親の物語。物語を語ることで、人は過去をどう語るか、過去への視点を自ずと選んでいることがわかってくる。全ての戦いが終わった後、月の帝に降りかかる出来事は弱者である民衆の知恵、では穿った見方か。でも人を救うには真実だけでは足りない、ということがはっきり伝わる名場面。

クボたちと闇の姉妹が戦う様もアクションシーンとして十分楽しめる出来。サブタイトルの「二本の弦の秘密」もなるほど、と唸らされる。クボが持つ三味線も意味があったわけで。親子の情も合わせ、フィクションの持つ力を感じる一本でした。