アクションは切れ、余韻は残る話【鑑賞「キングスマン:ゴールデン・サークル」】

大人のアクション映画、今回も全開でした。

【作品紹介】
表の顔は、ロンドンの高級テーラー。その実態は、どの国にも属さない世界最強のスパイ機関だった!全世界が熱狂した「キングスマン」から2年。イギリスから世界に飛び出して、キレッキレの超絶アクションもギミック満載のスパイ・ガジェットも常識破りのパワーアップ!前作メンバーはそのままに超個性的な新キャラクターを加え、またもや世界をブッ飛ばした最新作がやってくる!
【ストーリー】
世界的麻薬組織ゴールデン・サークルの攻撃により壊滅したキングスマン。残されたエグジーとメカ担当のマーリンは、バーボン・ウイスキーの蒸留所を経営するコテコテにアメリカンな同盟・ステイツマンと合流。さらに死んだはずのハリーまで現れる!一方、上品な見た目に反して超サイコなゴールデン・サークルの女ボス・ボビーは世界中の麻薬使用者を人質にした驚愕の陰謀を始動させていた。一流エージェントに成長したエグジーの前に現れたハリーの秘密とは?エグジーは敵の陰謀を阻止することができるのか?

公式サイトより)

予告編でもちらりとでたように、今回もスタイリッシュな英国紳士がちょっと過激に活躍する話。その過激具合がマンガ的なのも前作同様。良識的な人は眉をひそめるような場面や展開が続出するので見る人を選ぶ一本ではあります。

2018-01-12 11 58 37
選曲がハマっているのが素晴らしい。

でもプロローグでプリンス「レッツ・ゴー・クレイジー」(フィギュアスケート羽生結弦選手がショートプログラムで採用した曲)にのせて派手なアクションシーンが繰り広げられると「もうどーでもいいやー最っ高〜」と楽しめてしまうのです。クライマックスのアクションシーンで流れる曲はキャメオ「ワード・アップ」だし。登場人物に気持ちを寄せてハラハラドキドキするより、客観的に非現実的なアクションを楽しめばいいわけですよ。エージェントたちが使う武器もマンガ的だし。傘ライフルは前作にも登場したけど、今作で登場したアタッシュケースも最高。ミサイルだけかと思ったら(爆笑)。バカみたいな武器で大真面目に戦うズレっぷりがいいですね。

このシリーズのズレは小道具だけでない。一般的な映画とくらべてもズレがある。特徴的なのは「キングスマン」メンバーがかなりあっさり「退場」すること。前作も今作も「キングスマン」のリーダーは消えるために登場するようなもので、「キングスマン」に危機が来たと表現する以上のものはなし。同僚たちも地味に姿を消す人が目立つ(見せ場がある人もいるけど)。それが「えっこの人、もう登場しないの…?」という喪失感やスパイ組織の非情さ描写にも繋がってはいるのだけど。そもそも前作はイギリスにおける階層間のズレ、今作はイギリスとアメリカの文化のズレ、を描写しているし。

で最もズレているのは今作の敵描写ですよ。麻薬組織「ゴールデン・サークル」のボスが悪い奴なのは当然としても、その陰謀に賛同する人物、むしろ利用しようとする人物も登場してきて何が善か悪かあいまいになっていく。主人公たちの行動は弱い人を助けるという意味では一貫しているけれど。観客ひとりひとりがドラッグというものをどう見るかによって、結末の解釈はズレまくる気がします。そこも狙って作られたのかな…だとしたら、なかなかの確信犯です。

次作への引きを残しつつ一件落着めでたしめでたしっぽく終わってはいるものの、ウイスキーをロックで飲んだかのようになかなか酔いが冷めない一本でした。