好奇心が組織をちょこっと変える話【書評「ある日うっかりPTA」】

軽く読ませながらも、社会活動への関わり方を考えさせられた本でした。

【内容紹介】
金髪、ヒゲ、サングラスのフリーライターがひょんなことから、息子が通う公立小学校のPTA会長に就任!自分には無関係な存在として大した関わりも持ってこなかったPTA。三年の任期を経て今、感じることとは―。PTA会長になるのは簡単だ。(中略)なぜならば公立小学校の場合、自分からPTA会長をやりますなんて言い出す人間はほぼ皆無だからである。PTA会長に大事な資質。それは、おっちょこちょいであることだ。はい、おっちょこちょいです。私、自分でもおっちょこちょいだと思います。そうじゃなかったら、PTA会長になんてなるわけがないじゃないですか――。(本文より)

Amazonの著書紹介ページより)

著者は自分を「おっちょこちょい」と評しているが、実際に動かしてきたのは好奇心だと思う。

断らなければその先がある。自分の知らなかったことをいろいろ教えてもらえる。思ってもみなかった世界が、すぐ前に開けているのかもしれない。それを知らずに済ませるのは、もったいなさすぎるんじゃないか。

というのがとても腑に落ちる。個人的にも様々な役職を引き受ける際に、似たようなことを思ったのだ。この本はPTAについて書かれているが、個人と組織の関わり方ってPTAに限らず自治会や労働組合など、どこも似たり寄ったりな気がする。

この風貌で会長を務めたのもスゴイ(笑)

「がんばらない、をがんばろう」を合言葉に旧態依然に見える業務は改善する。当初は存在意義がわからなかった上部団体については「よそのPTAはどうしてるんだ?」という情報交換の場と解釈し、仲間もできる。でも人間関係がこじれてしまうこともある。そして雰囲気になじめないなら距離を置く。団体行動が苦手というフリーライターの著者と、前例だらけのガチガチ組織の関わり方は意外に自然だった。パートナーである校長先生との関係が良かったのもあるかもしれないが、先述した著者の「好奇心」も良かったとのだと思う。

対象に好奇心を発揮する時って、まずは対象の有り様をきちんと知ることから始まるわけで謙虚な姿勢から始まらざるを得ない。自身の勝手な思い込みだけで対象をいじることはない。まず知った上で、問題があれば自分一人ではなく仲間とともに変える(ココ大事)。なんだったら組織外の人も巻き込む。この本の中でもそんな例が出てきた。「PTAはここがヘン!」と言い立てて終わるだけでなく、きちんと関わって結果も出した著者はオトナなのである。

そのときそのときを一所懸命にやって、時期が来たら後の人に譲って去る。(中略)関わる人それぞれがが限られた時間の中で最善を尽くせばいい。

著者が3年間の小学校PTA会長活動で得たのはたまに飲みに行ける地元の友達がけっこうできただけ、と謙遜するが、地元に仲間をつくれるって実際はとても有意義なのではないか、とも思う。温泉旅行、楽しそうだもの。

ある日うっかりPTA

ある日うっかりPTA

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杉江 松恋
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