気持ちのやり場がどこにもない話【観賞「エイリアン:コヴェナント」】

「つまらないですよ」「面白いらしいよ」と真逆の評価を聞いたので前作「プロメテウス」を鑑賞した上で臨んだのですが…うーむ。

【イントロダクション】
メガヒット・シリーズ「エイリアン」の創造主である巨匠リドリー・スコットが直々にメガホンを執った待望の最新作「エイリアン:コヴェナント」は、これまで謎のベールに覆われてきた“エイリアン誕生の秘密”を解き明かす物語だ。その背景となるのは第1作「エイリアン」の20年前にあたる時代。シリーズの原点に回帰し極限の緊張感とバイオレントなショック描写の演出に腕をふるったリドリー・スコット監督は、息もつかせぬストーリー展開の果てに「誰がエイリアンを創造したのか?」という大いなる疑問の答えを提示していく。
【ストーリー】
人類の植民地となる惑星オリガエ6への移住計画のために、2000人の男女を乗せて地球を旅立った移住船コヴェナント号が、航海中に宇宙空間で大事故に見舞われる。修復作業中に奇妙な電波を受信したクルーは、発信元の惑星を調査することに。やがて事故で夫を亡くした女性乗組員ダニエルズやアンドロイドのウォルターらが降り立ったその惑星は、自然環境が地球と極めて似通っていた。しかし美しい“宇宙の楽園”のように思われた未知の惑星には、あの凶暴な生命体エイリアンをめぐる恐るべき秘密が隠されていた…。

公式サイトより)

前作がヒットしたので続編、また続編…と統一感なく増築を繰り返すシリーズ映画の中で、前作「プロメテウス」はエイリアンの起源に迫ろうという話でした。とはいっても公開時は見逃したわけですが。公開時の宣伝がどっちつかずだった印象があるんですね。新シリーズ起動!とか打ち出すこともなく、エイリアンの前日譚らしい、と噂が広まっていたんで、よく分からなかった。

で、「プロメテウス」と「エイリアン:コヴェナント」ですが。確かに「エイリアン:コヴェナント」は「プロメテウス」続編で「エイリアン」シリーズの最新作です。増築し尽くした本館の隣に別館が建ち始めた趣。この2作は創造主と創造物の関係を色々な層で提示しているので、ドラマとして一つの筋が立ってはいる。人間がエイリアン化する、エイリアンに襲われる、などの映画的お楽しみもある。

表紙を飾るべきだったのはマイケル・ファスベンダーでは。

でも肝心の「創造主と創造物の物語」が今ひとつ面白くない。創造物だったアイツが創造主になったら面白いでしょ?という程度でしかない。偉大なる創造主という一神教的世界観を逆手に取ったのだろうけど、過去一連のシリーズで語られた顛末のきっかけは、コイツ一人に集約されるの?という点に説得力を感じられなかった。彼の創造への欲望は伝わるんだけども。

エイリアンの起源という点では、前作「プロメテウス」でほぼ語られているし、今作でエイリアンの創造主(人類の創造主でもある)種族「エンジニア」があっという間に丸ごと退場してしまったのももったいない。コヴェナント号のクルー達もとてもプロフェッショナルとはいえない。とくに序盤、着陸艇を失くしてしまう顛末はお粗末の一言。結果、どの登場人物にも感情移入しにくいのですよ。勝手にやってれば、という感じ。

ただ今作は明らかに次回作を意識した宙ぶらりんな形で終わるので、次回作できっちりケリをつけてほしい。創造主が創造物から逆襲される結末がないと落ち着かんぞ。次回作はひょっとしたらエイリアンに感情移入する作品になるのかもしれません。