ロクデナシが憎みきれない話【鑑賞「SCOOP!」】

必ずしも善人とは言い切れない人物が主人公の映画って久しぶりに見たなぁ。

<作品紹介>
日本一撮られない男・福山雅治がまさかのパパラッチ役を熱演!「モテキ」「バクマン。」大根仁監督との初タッグで挑むのは、芸能スキャンダルから社会事件まで様々なネタを追いかけるカメラマンと記者の物語。原作は、1985年に製作された伝説の映画=原田眞人監督・脚本作品「盗写 1/250秒」。写真週刊誌の編集部を舞台に描く、2016年度最もスキャンダラスでスリリングな圧倒的エンタテインメント大作!
<STORY>
かつて数々の伝説的スクープをモノにしてきた凄腕カメラマン・都城静。しかし過去のある出来事をきっかけに報道写真への情熱を失ってしまった静は、芸能スキャンダル専門のパパラッチに転身。何年もの間、自堕落な日々を過ごしてきた。そんな彼に、再び転機が訪れる。写真週刊誌「SCOOP!」に配属されたばかりのド新人記者・行川野火とコンビを組まされる羽目になってしまったのである。まったく噛み合わずケンカばかりの静と野火。ところが、この凸凹コンビが、まさかまさかの大活躍で独占スクープを連発!そしてついに、日本中が注目する重大事件が発生する…。

(以上、公式サイトより)

パパラッチを主人公にした作品は洋画でも最近「ナイトクローラー」というのがあった(未見)。行為は必ずしも褒められたものではないがその仕事に対しての需要は絶対にあるという意味で、パパラッチは善悪の境界線上の存在のよう。原作映画で原田芳雄が演じた役を今回は福山雅治が担ったのが今作の肝でしょうね。汚れ役の主人公をもっとリアルにキャスティングするなら別の俳優なんでしょうが、福山雅治になったことで汚れ役だがスターの雰囲気がしっかり。幅広い客層を意識した作風になったと思う。熱量控え目、クールで都会的な雰囲気な劇伴(劇中伴奏音楽)やテーマ曲も好印象でした。

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糸井重里のコピーは目立つところにあまりなかったような。

序盤の静と野火がコンビを組まされる下り、(劇中ではコンビを組んで2度目になる)若手政治家スキャンダルを狙う下りに若干もたつきを感じたものの(野火のカンの鈍い描写を引きずりすぎ?)、その直後のカーチェイス以降は一気に見せていく。主要人物の過去を匂わす程度の描写に留めたのも大人な作りでした。(監督は違うけど)福山雅治とまたコンビを組んだリリー・フランキーの怪演が見ものです。ただ、最後の事件を記事にしたときのキャプション(説明文)は正しく書いて欲しかったとは思う。観客を泣かせる方に舵を切りすぎたかな…。

編集部には二人のデスクがいて、彼らを通してスキャンダリズムとジャーナリズムと商業主義を問うのもポイントか。作中で結論めいた主張を打ち出さない一方で、そんな問いと一線を画し編集部からの注文をこなしていく静はプロの魅力。自身の本当の夢を抑えながら生きる静に共感もしてしまう。そのチャンスが突然来たとしても、自分の夢よりもっと大事なものを守ろうとしてしまう様も切ない。善と悪のすれすれを歩く運命に流されながらも、その場その場で誠実であろうと足掻く静は我々と大して変わらなかった。ロクデナシの主人公が最後は魅力的に見えてくる、ピカレスク映画の魅力を楽しめる作品でした。