為すべき正義を為す話【鑑賞「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」】

事実上の前作「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」では正直、ついていくのが大変だと思っていたけれど「キャプテン・アメリカ」シリーズを見た上で今作に臨んだところ、いやー面白かった!クロスオーバーを続けるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)で一番の出来ですよこれは。

【あらすじ】世界を危機から何度も救ってきたキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースらヒーローチーム「アベンジャーズ」。だがその陰で失われた命もまた多かった。世界は彼らに国連の指揮下に入るよう命じる。アイアンマンことトニー・スタークらは従おうとするが、スティーブは迷う。そんな中、国連を狙ったテロが勃発。犯人と目されたのスティーブの親友で悪の組織ヒドラ党に洗脳された「ウィンター・ソルジャー」ことバッキー・バーンズだった。バッキーを捕まえられるのは自分しかいないと動き出すスティーブ。それを独断だとして止めようとするトニー。キャプテン・アメリカとアイアンマン、アベンジャーズたちの対決は避けられないのか…。

キャップの現相棒「ファルコン」もいいキャラでした
キャップの現相棒「ファルコン」もいいキャラでした

見る前は「マーベルヒーローのあいつとこいつ、戦ったらどうなるのか、見てみたいでしょー見せますよー」程度で製作された作品だと思っていた。ヒーローが集まる「アベンジャーズ」とは真逆のお祭り的内容ってことで。ところが今作は話がどんどんシリアスになっていく。「キャプテン・アメリカ」シリーズ前作「ウィンター・ソルジャー」もシビアな展開だったけど(予習としてビデオ鑑賞)今作はそれ以上。シリーズ一番の激渋話です。

興味深いのはDCコミックのシリーズ化「スーパーマンvバットマン ジャスティスの誕生」でもモチーフになっていた「正義の執行に伴う犠牲者」の存在が、今作でも中心に据えられていたこと。「エイジ・オブ・ウルトロン」ではアベンジャーズたちが一般市民を助ける場面が印象に残っていただけに「マーベルもそっちに舵を切ったか」と思いました。それもかなり深く舵を切っている。今作の敵の最後の切り札には驚かされました(ひょっとしてアメコミに詳しければそうでもないのかな?)。

その切り札、一歩間違うとご都合主義的でもあるんだけど、そこで説得力を持たせるのがキャラクター描写。話のほぼ全般は正義と情に厚いスティーブが持って行き、後半でトニーが熱情をほとばしらせて盛り上げる。トニーについても今作で必要な背景説明はされている一方、トニーが主役だった「アイアンマン2」も思い出され、説得力がいや増す。

そもそもキャプテン・アメリカというキャラクター自身、MCUの中では一番、正義を為そう為そうとしているんだけど、やればやるほど自身が拠り所とする組織から望まないのに飛び出してしまう悲劇の存在でもある。今作ではとうとう社会全体から飛び出すようなことになってしまった。

でも自身が信じる正義を為そうとし続ける彼には、離れてしまう友もいるかもしれんが、新たな出会いもあるのですよ。

何が言いたいかというと新キャラ「ブラックパンサー」最高ってこと!

今作を観る前には「また『黒豹』とかいう一般日本人には馴染みのないマーベルヒーローが出るのか面倒臭いな何モンだこいつ」と斜に構えてました。これまで鉄人間も蟻人間も米国主将ですら受け入れてきたくせにね…。

いいんですよブラックパンサー!なんであんなに強いのか分からない(正体は明かされる)けど、ヒーローの能力を説明するより正体キャラを魅力的に描くことに注力したのが素晴らしい。行きがかり上それぞれの正義にこだわってしまい分裂したアベンジャーズたちに代わって、今作で本来為されるべき正義をきっちり果たしてみせた姿に惚れました。一生服従ですw。

また「エイジ・オブ・ウルトロン」以降のマーベルヒーローではアントマン、スパイダーマンも登場するんですが彼らはまぁ、賑やかし、かなw。話の本筋には関わらない。

ただしこの二人、めっちゃ盛り上げてくれます!アクションシーンでは大活躍!某映画をネタにするスパイダーマン最高。(文字通り)大技炸裂のアントマンに対し「こっちで誰かあんな隠し技持ってる奴はいないのか」とぼやくアイアンマン最高。先述した通り話は最終的にどんどんシリアスになっていくんだけど「ヒーロー対決のお楽しみ」もきっちり描いたのも素晴らしい。斜に構えた観客も結局見たいんですよそういうのをさ!

とまぁこれまでのキャラクター描写の積み重ねとさりげない新キャラ登場があり、アクションも見てて楽しかったり辛かったりと盛りだくさん。シリーズ作を積み上げたMCUの底力が遺憾なく発揮された現時点での最高傑作でしょう。早く続きが見たい!ブラックパンサー単独作はまだか!次は「スパイダーマン・ホームカミング」!