哀しみも見える面白さとは【映画「清須会議」】

三谷幸喜、やればできるじゃん(←激烈上から目線)と思わされた一作。やはり力のある人だと再認識させられた。

今回は監督作としては初の時代劇。戦国時代、織田信長(とその長男)が本能寺の変で殺されたことから、織田家の家督を決める柴田勝家、羽柴秀吉ら家臣たちの話し合いが描かれる。

正直、見る前は気乗りしなかった。時代劇と言ってもフィクションではなく史実にもとづいた話なので、史実の一部だけ切り出されても「結末知ってるし」、というのが一点。それに何より、前作「ステキな金縛り」があまりにひどすぎた。

今作は笑わそうという場面はほとんどない。登場人物たちが現代語をしゃべるくらいか。しかし登場人物たちが皆魅力的なので「秀吉が『ぶっちゃけると~…』なんて言う訳ねーだろ」と思うよりも、「『この』秀吉なら言いそうだ」と思わせてしまう。言い回しや振る舞いは絶対現代風の脚色がされていると分かっていても「でもこの作品世界ならありだな」という説得力があった。声が出るわけじゃなかったがそんな場面が十分面白いのだ。そういう意味ではキャスティングがばっちりだったと思う。織田家の家督を決める会議にそろった4人が四者四様。

前作の感想で「次作はもう少し『縛り』のある作品でお願いします」って書いてたら、ほんとにそんな作品だった。変えられない史実を基にした作品で主な登場人物も一人を除いて(西田敏行…!)実在の人物。前述した「結末は分かっている」点も、見終わったときには登場人物たちの今後が分かっているだけにむしろ余韻となって機能した。

強いて言うなら、音楽の使い方か。冒頭、ずーっと伴奏が鳴りっぱなし。しかも軽い。ちゃらけた印象を持たせたので「また前作みたいなドタバタか?」と不安を感じさせた。後半になるとそんな印象は薄れたので、使う場面をもう少し控えるとか、曲調の軽さを控えるとかすればさらに重厚な面白さが出たんじゃないか。

ともあれ「ラヂオの時間」と並ぶ三谷映画の傑作ではないかと思いました。