理想論の中にヒントはある?【書評「ディズニー こころをつかむ9つの秘密」】

「東京ディズニーランドの最寄り駅が『東京ディズニーランド前』でないのはなぜか?」という著者の質問に正解がわかるなら読まなくてもいい本。ちっとも答えが浮かばなかったので読んでみました。この答えにブランドを作り、育てることの本質が集約されている。

【どんな本?】
東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドの2期生として入社し、開業からマーケティング全般に関わった著者が学び、体現したディズニーのブランド力の秘密を紹介する本。

【よかった点】
「ブランド」会社の存在意義をどう社会に認知させるか、コントロールしていくか。この本では、著者が一貫して「これでもか、これでもか」と考えながらやってきたこと以上に、米側から言われた「やってはいけないこと」のエピソードが秀逸なのだ。ブランドを認知させるには攻めだけでなく「守り」も必要で、守ることで社会にブランドへの飢餓感を与えられるのだ(そしてそこにマネタイズの機会も生じる)。

【惜しかった点】
上司に「恵まれすぎ」というと著者への難癖になってしまうが、東京ディズニーランドの成功は、アメリカで確立したブランドを著者ら日本人が学び、発展させたもの。自分たちの会社のブランド(存在理由)は何か、を「再確認する」のは容易ではない気がする。その辺の苦労話、回答はこの本にはない。

【どう読めばいい?】
「ディズニーだからできた」で済まさず、一種の「理想形」として読むべき。全てでなくてもまねできる点はあるはずだ。その差異を探すのがいいかもしれない。東京ディズニーランドの裏話も得られてお得な一冊です。

ディズニー こころをつかむ9つの秘密
ダイヤモンド社 (2013-05-27)
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