創作とは前進だった話【鑑賞・日岡兼三展】

高鍋町美術館で2015年11月23日まで開催中の「日岡兼三展」を見てきました。

モダンな作品が多かったです
モダンな作品が多かったです

チラシによると日岡兼三氏は旧満州国生まれ。昭和29年から宮崎市に住み画塾を主催。創作の傍ら多くの美術大学生を輩出、平成15年に57歳で亡くなりました。輩出した学生の中には漫画家の東村アキコもいて、日岡氏との思い出を漫画「かくかくしかじか」にて描いています。最後の「描け」ってのがぐっと来るんですよねー。

しかし個人的には、青が強烈的なインスタレーション「時」を以前見ており、日岡兼三というとそっちの方が印象に残っていたのです。同じ人なのかなーピンとこないなーと思いながらの鑑賞でした。

会場は大きく3ブロック構成。第1室は「時」のインスタレーション、第2室と回廊でその他の作品を展示してしています。

「その他の絵画」とまとめましたが、内容は油彩水彩アクリルから彫刻、写真、CG(!)まで。「画壇のトリックスター」と呼ぶ人がいるほど、多彩なジャンルに挑戦した人だったようです。

母親を描いた油彩画に見て取れる確かな描写力のいっぽうで、抽象画のモダンさ、洗練さもまた魅力的。「虫」シリーズではキャンバスにみっちり描き込まれた線が力強く迫ってきました。

故人を知っている人が今も多い中、断片的な情報や作品だけを見て故人のことを会ってもないのに判断するのはアレなのかもしれませんが、生前の日岡氏が言っていたという「描け」という言葉の意味を考えてしまいました。

もちろん「基礎をしっかりつくれ」という学生達への叱咤もあるでしょうが、様々なジャンルに挑んでいた彼自身の作品群を見ていると「止まるな。前へ進め」という思いもあったのではと感じたのです。でなかったら、創作にCGは使わないんじゃないかな。

新しい創作への意欲、進み続ける意思を強く感じた展覧会でした。