でかい夢を小さく伝えた話【鑑賞・WE ARE Perfume】

2014年10月から4カ国で行なわれた、テクノポップ・アイドル Perfume3度目のワールド・ツアードキュメント。彼女たちの来歴にも触れつつ、最終ニューヨーク公演まで密着する。

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視聴環境の違いって予想以上に大きいのです。

次はもっとよりよいライブにしようと、終演後も話し合うPerfumeの3人やスタッフ達の努力が印象的。特に終演後の3人は毎回、足や首を冷やしている。昨年、福岡でライブを見た際「すっげー細いピンヒール履いて踊ってるなぁ」と思っていたので、やはり体への負担は相当なものなんですね。

NY公演ヘのあこがれ、成功しての安堵。「次はマジソン・スクウェア・ガーデンだぁ!」と言い切ったあーちゃんは、まさにリーダーの器。途中何回か差し挟まれる3人のインタビューを通して、Perfumeは3人が絶妙のバランスで成り立っていることも伝わってきた。

アジアから欧米まで、ファンの熱狂っぷりも見ていて楽しい。シンガポールのライブに年配の白人カップルが見に来てたり、黒人の女の子が涙ぐみながらPerfumeへの思いを語る様など、彼女たちの人気は国籍を越えて広がっているのだ。

と、3人を中心にスタッフ、ファンをも含めた(つまり今作を鑑賞した我々も!)「WE ARE Perfume」なのだ…という内容にグッと来た一方、今作を「劇場作品」と位置付けると残念な点も少なくないのです。

まずは真っ暗な中での大画面&大音響で見る体験が生かされないこと。せっかくいい視聴環境でPerfumeを鑑賞できるのだから、もっと曲を聴きたかった。オープニングのSXSW(アメリカテキサス州で毎年3月行なわれる、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント)でのパフォーマンスはデジタル合成もしたいい感じの映像だったので、これは本編も期待できる!と思ったのだけど。NY公演がソフト化されているとはいえ、フルコーラスで聴けたのは各地のライブのラストで歌われた曲1曲だけなのは余りにもったいない。

決定的に残念なのは作品の雰囲気がどうもテレビっぽいこと。全体に緊張感が不足しているのだ。

この作品はテレビで「放映」されるのではなく、音響の良い暗い部屋にあるスクリーンに「上映」される。スクリーンを凝視しているこちら側は、ある程度の緊張感を持ちながら対峙することになる。

なのに各地の公演を紹介するのに毎回空港到着シーンから始まるのが非常に冗長なのだ。その土地土地を紹介するようなショットが続くのも毎回同じ。公演直前、3人が手を取り合って集中し、ステージに上がる→ライブ開幕、観客熱狂…というシーンも繰り返される。3人が集中する場面だけならまだしも、その後のライブ開幕シーンまで繰り返す必要はあっただろうか。

彼女たちは今回のツアー最終公演、ニューヨークに並々ならぬ思いがあった様子。ならば単純にツアーに同行した様子を続けるだけでなく、ニューヨークへ向けて緊張感を高めていく構成にできなかったか。(ハリセンボン近藤春菜はかなりの腕前だったが)ナレーションや各公演を繋ぐCGを使わず、最低限のテロップだけにしたら雰囲気が引き締まったかもしれない。観光シーンを挟む程度はアリかもしれないが…。

と映像作品としては劇場公開のスケールに届いていないのだが、Perfumeの奮闘っぷりは十分伝わる一作でした。最後に最新曲「STAR TRAIN」が流れるとツンとは来る。ファンは見とくべし。またライブ行きたくなるので!