異なる層の面白さは両立しづらい話【鑑賞「マイティ・ソー バトルロイヤル」】

シリーズ第3弾、としての面白みはあまりなかったような。

【作品紹介】
誰にも止められない!限界突破のバトル・アクション・エンターテイメント。今、新『アベンジャーズ』へのカウントダウンが始まる!
【ストーリー】
アベンジャーズの一員ソーの前に<死の女神・ヘラ>が現れた。復讐と野望に燃えるヘラは、ソーの故郷へ攻撃をはじめる。故郷を奪われたソーは、この最強の敵を倒すため盟友ハルク、宿敵ロキらと型破りのチーム“リベンジャーズ”を組み極限バトルに挑む。 果たして、ソーたちは史上最強の敵からこの世界を守ることができるのか?死の女神・ヘラの復讐の目的は!?そこには、ソーの運命を変える秘密が隠されていたー。

公式ホームページより)

「原題が(北欧神話の終末の日を意味する)『ラグナロク』なのに『バトルロイヤル』なんていうありきたりな邦題がついちゃった」という評判をネットで見ていたものの、作品を見てみると「バトルロイヤル」という邦題は実はあながち外してない。予告編でもあった通り、ソーとハルクの激突が今作の見せ場なので。むしろ「ラグナロク」の描かれ方ってあっさりしてましたよね。

敵役「ヘラ」が強いのは仕方ないけど中盤に登場する「グランドマスター」も敵役的なので敵が二人別々に登場するのもどうかなーと思ったのでした。

ユーモアがシリーズ前2作より多め、なのはその通り。特にシリーズ前2作と「アベンジャーズ」で悪役だったソーの義弟・ロキがいい味を出していた。世界観を同じくする一連の「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の中で、善か悪か立場がはっきりせず笑いも取れるキャラクターってロキくらいではないか。

今作はシリーズ第3弾というより作品紹介にある通り「新アベンジャーズへのカウントダウン」という位置付けにあったよう。前2作の設定が今作でほぼなかったことになってしまったので。前2作の主要キャラクターも今作でかなり退場。浅野忠信には見せ場はあったけど。生き残ったキャラクターたちは来年春に前後編の前編が公開される予定の「アベンジャーズ/インフィニティウォー」に登場するらしい。序盤にドクター・ストレンジが登場しておっ!と思ったけど序盤だけだったなぁ…。

何より、ソーたちの暮らす世界「アスガルド」と地球(ミッドガルド)の関係も設定が変わったよね?二つの世界を結ぶ「虹の橋」って「スター・トレック」に登場する転送装置と同じだったんだね?場所を移動するだけ、ってことだったのね?単なる場所でなく「異世界」を結ぶのが虹の橋だと思っていたんだけど。ソーは地球人の理解や常識が及ばない「異世界の人」だから地球人とは違う特殊能力を持っている、と理解していたのに、アスガルドの人々はただの宇宙人になってしまった。個人的にはそこが一番残念なところ。

MCUは「アベンジャーズ/インフィニティウォー」でこれまでのキャストを一区切りするというニュースがネットに流れている。そのために「マイティ・ソー」シリーズもまとめにかかったな、というのが今作の印象です。ただ、「マイティ・ソー」シリーズより大きなMCUという作品世界を一旦区切る方を優先したためか、シリーズ完結編としての面白みは格段に薄かった。

作品単体、前作を踏まえたシリーズ、関連作を含めた世界。三つのレベルでの面白さを同時に維持するのはやはり難しい。「アベンジャーズ/インフィニティウォー」が面白ければ今作の残念さも払拭されるはずだが、さて。