一人で創造はできない話【鑑賞・大河原邦男展】

福岡県北九州市・北九州市漫画ミュージアムで2017年1月15日まで開催中の「メカニックデザイナー 大河原邦男展」を見てきました。

大河原邦男氏はアニメに登場するロボットや航空機など、乗り物のデザインを続けているデザイナー。代表作に「機動戦士ガンダム」、ギャグアニメ「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」などがあります。

会場が駅から近いのがありがたかった

会場は大河原氏直筆の設定画を最初期の「科学忍者隊ガッチャマン」からズラーっと展示。機動戦士ガンダムの劇場版ポスターの原画もありました。星空を背に敵のロボット(モビルスーツ)が並ぶ中、後方にシルエットのように大きく描かれる主役ロボ・ガンダムという構図の「機動戦士ガンダム  哀・戦士編」のポスターは生賴範義の影響を受けていたそうで、実に興味深い。意外なところで繋がりましたねー。

もっとも、主に展示されているのはアニメ用の「設定画」なので、どの作品もサイズが同じ。新聞紙半分くらいの大きさか。展示としてメリハリがつきにくいのだけど、これはまぁ仕方ないですよね…。

そんな中でも、大河原氏が現役デザイナーとして活躍できているヒントが今回の展示でもわかりました。

一つはアニメという2次元で描かれるメカに3次元の魅力を与えたこと。昔のロボットアニメは主役ロボの変形合体が流行りだったのだけど、その合体変形システムを一枚の紙で説明してみせる手際の良さ。と、そのアイデア。今回展示されているその設定画を見ると、昔のロボットは腰が180度回転したり腕が逆方向に曲がったりしてパズルのように合体変形してましたわ確かに。見せ場だったよなー。何もないところから自身の頭の中だけでそういった発想をするのだからすごい。実際に立体を作っておもちゃメーカーに仕組みを説明したこともあるそうです。商業アニメですからおもちゃが売れてナンボですからね。

かっこいいメカもユーモラスなメカも描けるのが大河原氏の魅力

もう一つは自身だけで仕事を完結させなかったこと。先述したガンダムの場合、すでにあった主役ロボのデザイン案に大河原氏が「派手さが足りない」と全く別のロボットをデザインし、それに別のスタッフが「今回の場合ロボットに口があるのはリアルじゃない」と意見し、最終的に口がなくなったそう。敵側ロボの基本デザインもアイデアを出したのは監督で、大河原氏が仕上げていったということです。別の作品のコーナーでは、大河原氏のデザインに監督が細部にわたって赤鉛筆で修正を指示している設定画も展示されていました。

アニメは集団で作るものという考えに基づき、スポンサーやスタッフの要望、視聴者(子供たち)の期待に応えて結果を出していく。そして「どう応えるか」に自分の個性を出す。大河原氏の場合、合体や変形のアイデアだったわけで。共同作業の意味と醍醐味を考えさせられた展示会でした。