扉を開けて終わった話【鑑賞「X-MEN:アポカリプス」】

「最後の敵は、神。」という惹句の今作、でも最後の敵は真の敵ではなかったみたい。

〈作品紹介〉
2000年に公開されたシリーズ第1作「X-メン」以来、これまでの5作が世界的に驚異のヒットを記録。「アメコミヒーロー映画」の原点として人気が衰えない「X-MENシリーズ」が、ここに一つのクライマックスを迎える!

〈ストーリー〉
紀元前3600年。エジプトのピラミッドで、「アポカリプス」として君臨する、人類史上初のミュータント、エン・サバ・ヌールが、新たなミュータントの肉体へ転移しようとしていた。しかし、反乱が起こりピラミッドは崩壊。アポカリプスは瓦礫の下で永い眠りにつくー。

1983年。アポカリプスは目を覚まし、核兵器まで製造し堕落した人類に怒りを募らせる。マグニートーら4人のミュータント“黙示録の四騎士”を集めたアポカリプスは、強力なパワーで各国から核兵器を葬り、世界を滅ぼし再構築し始める。不穏な動きを察知したプロフェッサーXも、その能力を狙ったアポカリプスに捕らわれてしまう。最古最強の“神”アポカリプスを止める為には、X-MEN全員の力を集結させなければならない。ミスティークを中心に若いミュータントたちは、かつてない戦いに挑むことになった。

公式サイトより)

「X-メン」(2000年)「X-MEN2」(2003年)「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」(2006年)の旧3部作は劇場で見たんです。ただこのシリーズ、その後がずいぶん開きました。2010年に旧3部作の前日譚となる新作「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」、2014年に「X-MEN:フューチャー&パスト」が公開されていたんですが未見でした。今作「アポカリプス」公開前に慌ててチェックしたところです。

新旧をつなぎ、違うところを目指す意欲作でした
新旧をつなぎ、違うところを目指す意欲作でした

この新シリーズ、旧3部作の前日譚のようでありながら旧3部作の悪役ミュータントの設定を微妙に変え、「アメリカの歴史の影にミュータントたちがいたら…?」という「What If」モノにもなっているのが興味深いところ。しかも前作「フューチャー&パスト」で旧3部作のキャストも登場させて旧3部作の話をなかったことにする「歴史改変」を実にスムーズな形で成し遂げてしまいました。

マーベル映画が過去の作品から積み上げて積み上げて一つの世界を作っているのとはまた違う、アクロバティックなシリーズ構成になったわけです。

そうなると前作「フューチャー&パスト」でこのシリーズは一区切りした感も。新3部作完結編と謳う今作で何を描くのかと思っていましたが、第1作「X-メン」に寄せ、しかし明らかにこの先は違う展開になることを匂わせる興味深い1本でした。

正直なところ、今作の敵「アポカリプス」は能力はすごいんだけどキャラクターとしての魅力は今ひとつ。最終的に成し遂げたのはプロフェッサーXを禿頭にしたくらいw。むしろ旧3部作の主要キャラクターがいよいよ登場してきたのが楽しかった。

新旧シリーズとも、生まれながら特殊能力を持った人間「ミュータント」を、その特殊能力の映画的面白さは見せつつ、キャラクターとしては差別を受ける者としての苦悩を描くのは同じ。旧3部作は人間社会とどう向き合うかをめぐりミュータント同士が戦うのが基本的な流れでしたが、新3部作の完結編である今作では真の敵を暗示して終わりました。高揚感と続きが見たくなるところでスパッと終わるクライマックスは、連続活劇の面白さを凝縮してましたね。

今作の先をエンターテイメントとして成立させるのは相当難しいでしょうが、そこへ挑む扉を開けただけでもスゴイこと。じっくり次の機会を待ちたいと思います。ハリウッドはエンタメでも攻めてるよなぁ。