偏見もまたこちらを見ている話【鑑賞「ズートピア」】

絶賛の評しか聞こえてこない作品なんですが、なるほど確かに傑作でした。こりゃやばい。

【作品紹介】
ここは、動物たちが人間のように暮らす“楽園”、ズートピア──誰もが夢を叶えられる、人間も顔負けの超ハイテク文明社会。だが、あらゆる種類の動物たちが平和に共存するこの理想の大都会に、いま史上最大の危機が訪れていた──。ディズニーが、動物たちの“楽園”を舞台に贈る感動のファンタジー・アドベンチャー。ズートピア初のウサギの警察官のジュディが、夢を忘れたサギ師のキツネ、ニックを相棒に、大都会ズートピアに仕掛けられた恐るべき陰謀に挑む。“夢を信じる力”とニックとの友情の絆を武器に、彼女は奇跡を起こすことができるのか…?夢を信じて諦めずに進み続ければ、きっと世界は変わる。感動のファンタジー・アドベンチャー『ズートピア』が、世界に希望の扉を開く。
【あらすじ】
動物たちの“楽園”ズートピアで、ウサギとして初の警察官になったジュディ。でも、ひとつだけ問題が…。警察官になるのは通常、クマやカバのように大きくてタフな動物たちで、小さく可愛らしすぎる彼女は半人前扱いなのだ。だが、ついにジュディも捜査に参加するチャンスが!ただし、与えられた時間はたった48時間。失敗したらクビで、彼女の夢も消えてしまう…。頼みの綱は、事件の手がかりを握るサギ師のキツネ、ニックだけ。最も相棒にふさわしくない二人は、互いにダマしダマされながら、ある行方不明事件の捜査を開始。だが、その事件の背後にはズートピアを狙う陰謀が隠されていた…。

公式サイトより)

…と、公式サイトから基礎的な内容を紹介してみましたが、今作の真のテーマがここで語られていないのが惜しい。「夢を信じる力」とありますが、実際には夢に立ちはだかるものの一つ「偏見」という、かなりシビアな問題の提起に挑んでいるわけです。まぁそこを前面に出すと説教くさくなりそう、という懸念もありますが。

だから正直ネットで絶賛の声を聞くまで、見たい映画のリストには入っていなかったのです。キャラクターたちは擬人化された動物で子供向けな感じがして。実際は大人こそ見るべき一本ですね。

ソフト化されたら、買ってもいいかなぁ
ソフト化されたら、買ってもいいかなぁ

何が見事かといって、自分と異なる者への偏見は誰でも持ってる(主人公でさえ!)こと、その解消についてもさらりと描いていること(主人公以外は)。ジュディに必要以上にキツく当たった警察署長もジュディを認めているし、キツネには気をつけろと諭していたジュディの両親もキツネと仕事をしているし。

そして主人公ジュディの偏見の発露が記者会見というのも効果的。ちょっと非日常の場で話す必要に迫られると、予想外のことを口走ってしまうことってあると思うのです。この場合、ジュディに質問をぶつける記者側も同じで、雰囲気に流され必要以上に聞かなくてもいいことを質問してしまいがち。その結果、両者が共犯関係になって開けなくてもいいものを開けてしまうわけです。そして無駄に他者を傷つけることになる。

弱者だから、仲間が多いからといって独善は罰せられる一方、差異によるギャグも挑んでいるのが素晴らしい。ナマケモノのくだりはもちろん、マフィアのボスにあんな動物を持ってきたところに作り手たちの作為を感じます。我々観客はその差異にぷっと笑いつつ、自分の偏見にも向き合ってしまう。

そういったテーマの鋭く描く一方で、ジュディやニックをはじめとする擬人化された動物たちのチャーミングさもまた素晴らしい。見終わるとどのキャラでさえも(悪役でさえも!)愛らしく見えるのが本当に本当に恐ろしい。個人的にはニックが最高。皮肉屋だけど実にいい奴です。見えます…ディズニーランドで彼らがパレードしてたりズートピアがアトラクションになってたりする様子が。

普遍的なテーマを魅力的なキャラクターたちのドラマで描いた、ディズニー恐るべし、という一本でした。