電子書籍で続けて読んだ小説2冊が偶然にも非常に対比的だったのでまとめて感想を。
最初に読んだのは川端裕人「川の名前」。
【あらすじ】小学5年生の夏休みに、近所を流れる川を自由研究の課題に選んだ少年たち。そこには意外な生き物が住んでいた!足元から世界へ広がる自然と自分たちが今いる場所の意味を知って、少年たちは川と共に生きる「カワガキ」になる…。
クライマックス、台風の中、河口を目指し川を下る少年たちの冒険はテレビで生中継される。彼らの奮闘に感化された他の少年たちによる自己紹介が胸を打つのです(詳しくは書きませんが)。身近な自然を誇り、足元の川は世界につながっていることを知った者同士の挨拶。川は世界につながり、足元の環境が今の自分を作っているという話でした。
で、そのあと選んだのはジョセフ・コンラッド「闇の奥」。映画「地獄の黙示録」原作でもあります。
【あらすじ】象牙貿易で絶大な権力を握るクルツを救出するため、船乗りマーロウはアフリカの奥地で川をさかのぼる。密林や謎の部族との接触を経てついに出会ったクルツの正体は…。
本当に偶然だったのだけど、「川の名前」が川を下る話だったのに対し、(読み始めてから気づいたのだが)「闇の奥」は川をさかのぼる話。そして上流に「根源」があるというモチーフも似ている。
しかし「川の名前」はその根源を善なるものと見たのに対し、「闇の奥」は何か禍々しいものと描写した。「恐ろしい!恐ろしい!」というクルツの最後の言葉を「川の名前」の少年たちの自己紹介と対比させると何か不思議な感覚になったのです。
「自分が何者であるか」といえるテーマを全く正反対の角度から見たよう。「川の名前」の少年たちが「闇の奥」で大人になったようでもあり(時代が違うけどw)。
自己の存在理由への問い掛けには恐ろしい答えがあるかもしれないが、その認識なしに人は存在し得ない、のか?
こういった偶然の出会いから思考が膨らむから(迷走かもしれんが)読書は面白いのです。