人間の武器を知った話【鑑賞「オデッセイ」】

リドリー・スコット監督作ではこれが一番気軽に見られる一本ではないか。エンタメとして楽しめる作品でした。

【あらすじ】第3次火星有人探査は突然の砂嵐で現地から急遽撤退を余儀なくされる。しかし撤退中にクルーの一人、マーク・ワトニーが行方不明に。ワトニーを探す時間もないまま、火星を離れる他の隊員たち。しかしワトニーは辛くも生きていた。火星に残った基地に戻るワトニー。第4次火星探査チームが来るのは4年後。しかし基地の通信機器は砂嵐で破壊され、食料は1年分しかない。ワトニーは生き延びられるか…?

…まぁ結局、生き延びて地球に帰るわけですが。史実に基づいた「アポロ13」とは違い、本作はSF小説が原作なので、ワトニーがどうサバイブしていくか、ワトニーをどう助けていくかが見所になるわけです。

サントラも買いました
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冒頭の砂嵐から隊員たちの火星撤退、行方不明になるワトニーの様子まで息をつかせず見せるリドリー・スコットの手腕はさすが。ワトニーが自分の腹に刺さったアンテナを抜いて縫合するシーンもそこそこグロく、リドリー・スコットらしい部分でした。

ただそこから、生き残ったワトニーの独白が増えてくる。ユーモアを忘れないワトニーの明るさがこちらにも伝わり、作品の基調を暗くシリアスなものにはしていない。

隊長が基地に残した音楽ライブラリーを「ダサい…」とグチりながらも聞き続けるワトニー。全編に流れる懐かしのヒット曲は、火星に一人取り残されたワトニーの過酷さとのギャップから、ワトニーの地球への思いを逆説的に語っているようで印象に残ります。アメコミ映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」でも昔の曲を劇中で使っていたけれど、使う意味があまり伝わらなかったんだよなー。

生物やコンピュータなど科学の知識を総動員して生き残っていくワトニー。ワトニーの生存を知ったNASA側の対応も、秘密会合を指輪物語の一節にたとえるスタッフがいたりする。(くじけてしまいそうな局面もあるけれど)困難なときこそユーモアを絶やさないワトニーら登場人物たちは等身大のヒーローとも思うのです。

だからこそ原作も英語版も「火星の人」というワトニーに焦点を当てたタイトルになっていたのに、邦題が「オデッセイ」ってのはどうにも負に落ちん。そりゃまぁ原題直訳で日本でヒットするか、といわれると難しいかなとは思うのだが…。

まぁタイトルはともあれw、困難なときこそ知恵とユーモアってことですよ!知恵やユーモアを持つのは人間だけ!シリアスになりすぎず人間を讃える、見終わって楽しくなる映画でした。