言葉の力を考えた話【鑑賞「イキるコトバ」】

1月10日、宮崎市の宮崎市民プラザであった宮崎市文化芸術人材育成講座「イキるコトバ」に行ってみました。

うなづく点が多々あったトークでした
うなづく点が多々あったトークでした

3部構成のうち対談の1部、ワークショップの2部に出席。ワークショップは市内の高校、大学生による、歌のイントロに乗せての曲紹介(紅白歌合戦などであるアレ)で、なかなか楽しめました。

特に今回は第1部、歌人・伊藤一彦氏と放送作家・寺坂直毅氏の対談が良かったのです。幾つかのテーマに沿ってトークをしていった中でまずは「言葉との出会い」について。

「言葉との出会い」

【伊藤】高校時代は思い悩む時期。心には許容量があるのだから、言葉にして外に出さないと辛くなる。短歌は大学の同級生に勧められて始めた。東京は非定形・無秩序な所で、形が定まらないのが不安に思ったが、短歌という形式のある表現が拠り所になった。

【寺坂】中学、高校はラジオばかり聞いていた。深夜番組にハガキを投稿するようになり、採用されると、しゃべれなくても書くことで表現できると思った。

【伊藤】短歌もラジオも作り手、聞き手がいて成立するところは同じ。

「伝える上で気をつけること」

【伊藤】言葉は人が人である理由の一つ。自分に伝えたいことがあるか、それが明瞭になっているかが大事。また、こう言うと相手がどう思うかと考える余裕も持ちたい。もちろん感情的に反応することもあるわけで、それは生きている以上当たり前。どう修復するかが大事。いつも完全であろうとするとぎこちなくなる。

【寺坂】ラジオ好きなので何気ない放送が今の自分を作っている。今は作り手の側で、1番組で5000通のメールを読むこともある。書き手の必死さを感じる。そこでメールを選ぶ基準は、短くて、内容が的確で、喋り手に質問するようなもの。

「伝えたいけど言葉にしづらいときの工夫は」

【伊藤】心の中は奥深く広い。言葉にならないものをどう表現するかは一生かけて探すようなもの。言葉にしづらいからマイナスなのではない。それだけのものを持っていると自負すれば良い。

「言葉を磨く工夫は」

【寺坂】街を歩くこと。デパート好きなのだが、取材に行く際も店に直行直帰はしない。周辺の街を歩き回ってデパートがその街にとってどれほど大切か感じてから向かう。

【伊藤】現実体験はそれを言葉で自分のものにする必要がある。言葉にすることで「経験」になる。また本を読んで書き言葉を学ぶのも大事。

「よく聞くために心がけることは」

【寺坂】「徹子の部屋」の黒柳徹子さんのように、相手に尋ねる時に喜ばせる工夫をしたい

【伊藤】「聞く」の中心は相手。「見る」の中心は自分。相手の言いたいことを察して聴けるといい。一方的な質問では相手の気持ちの流れを妨げる

…高校時代の師弟関係でもあるという二人。年齢差もあるんで決して対等な立場でのトークとはならなかったが、スクールカウンセラーでもあった伊藤氏は熟練さ、現役放送作家の寺坂氏は自身の経験から感じた瑞々しさが良かった対談でした。

自分の言葉は自分の頭の中だけで成立しない。体を動かし体験し、相手の存在も踏まえて練り続けることが大事なのですね。