ニッポン放送アナウンサー、吉田尚記氏による「コミュニケーション論」。非常に分かりやすく、具体的に、他人とスムーズな会話ができる技術を紹介している。
まず「コミュニケーション」の定義が明快だ。この本で著者が定義する「コミュニケーション」とは「成立すること自体が目的のゲーム」。ゲームであるがゆえにルールもある。そのルールとは
①敵味方に分かれた「対戦型」でなく、参加者全員による「協力型」
②ゲームの敵は「気まずさ」
③ゲームは「強制スタート」
④ゲームの「勝利条件」はコミュニケーションをとったあとに元気が出るかどうか
の4つ。そして「勝利」の確率を上げるためには「人にしゃべらせる」ことと説く。
コミュニケーション・ゲームでは、言葉は自分のものではなく、相手のためにあるものです。
相手の言い分に乗ってみることが悔しいという人がいたら、それはまだコミュニケーションを対戦型のゲームだと思ってるからです。
協力プレーを旨とする会話においては、自分の意見なんて要らない
人は、自分より優位に立っている人間に対してあまりものを言いたくなりません
…といった具合に的を射た分析がビシビシ連発され実に気持ちがいいw。
さらにこの後、「人にしゃべらせる方法を考えたときに、先入観は持っていたほうがいい。もっと言えば、先入観はむしろ間違ってるほうがいいかもしれないくらい」とも著者は畳み掛ける。なぜか?
さらに、タモリがトークでよく言っていたという「髪切った?」が「神の一手」と呼ぶにふさわしい優れた質問なのはなぜか?
さらにさらに「空気を読む」とは具体的にどういうことか?さらにさらにさらに(クドイな)、自分のキャラクター(特徴)を見つけるうえでいちばん重要なのは?
そして論の核心でもある「コミュニケーションをとっていて楽になる人」とはどんな人か?
著者自身「人から『つまらない』と言われるのが怖い。人と会うことが非常に苦手」だったそう。彼自身が傷ついて、悩み抜いて出した分析は最後まで納得させられる。
この本はネット中継で著者が喋った内容を書籍化したらしく、本文中にはネット中継の合間合間に入った視聴者からのツッコミも混じる。しかしそれが読みにくさに繋がらず、テーマの増幅、転換など効果的に使われている。そんな文体も侮れない一冊。時々読み直したくなること間違いなしな本でした。
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