終わらせるのは簡単じゃない話【鑑賞「進撃の巨人 エンド・オブ・ワールド」】

頑張ったとは思うんです。連載中の原作マンガを映画化するにあたり、何とか「完結感」を出そうと苦心した跡は伺えるんです…。

壁で囲った世界で100年以上暮らしてきた人類は、再び巨人たちの襲撃を受ける。破壊された壁を修復するため、エレンたちは巨人に立ち向かう。が、巨人に喰われたエレン自身が巨人に変貌、他の巨人を撃退する。拘束され追及を受けるエレン。その場に突然、巨人が現れ、エレンを奪い姿を消す。エレンは敵か味方か、そして壁の修復は成功するのか…。

完結編である本作では、基本的に「人が変貌する巨人」しか出てこないのが好印象。主な巨人に「キャラ」があるわけです。前編のようなキモいんだが没個性な巨人は平原を徘徊してるだけ。巨人が人を喰う場面は回想としてしかなかったかな。変化が付けられていて良かったと思います。

アクションシーンは良かったんですよ…
アクションシーンは良かったんですよ…

ただ、登場人物たちの行動原理に首をひねる場面はやっぱり残ってしまった。「自分は生き残るぞ」と言ってた人物が(無駄に)命を賭けてみたり、対立してた相手を突然助けてみたり。

しかし最大の問題は、物語上倒すべきなのが巨人なのか壁なのか(!)分からなくなってしまったこと。

今作における巨人の設定まではまだいい。しかし壁を「支配の象徴」と設定したのは余りに安易、ベタ、お約束ではなかったか。そんなありがちな見方が逆転して「安全の象徴」になっていたのが原作の基本世界観の一番魅力的な点ではなかったか。

その支配者像もどうも説得力がない。大衆の支配を維持するため巨人を意図的に呼び込んで(支配者に対立しかねない)血気盛んな若者を減らす、って…。人口減らして大衆の意欲も減らして、国が成り立つか?

だからといって支配者を守る壁を壊してリセットしようぜと言われてもね…。

真の敵は身内にいた、というお約束は、この世界観では効果的とは思えない。説明的だったり芝居がかったりしたセリフは前編同様、多かったし。アクションの見せ方はよかったのだから、作品世界の骨格もセリフ以外の手法で伝えてほしかった。中盤の「白い部屋」はナシですよやっぱり。

終盤で超大型巨人をぶっ飛ばしてみせても満足感は少なかった。なにしろクライマックスの舞台・壁の中段に、途中で退場したと思われた登場人物たちが突然再登場するので、壁を壊せるかというドキドキよりも「こいついつの間にこんな高いところにまで上って来たの?」というご都合主義を先に感じてしまった。

今作は、前編からの話を終わらせるためだけの内容だった感は否めない。「終わり良ければすべて良し」とは言うけれど、「終わり『良ければ』」ってのは結構高いハードルなのでありました。