イラストレーターとして生きる話【鑑賞「生賴範義展2」】

宮崎市のみやざきアートセンターで昨年開かれた「生賴範義展」の第2弾(2015年8月30日まで)。第1弾が活動全体を総括するような内容だったのに対し、「記憶の回廊」と題した今回は1966年から1984年の作品を紹介する企画になっておりました。

今回も見応え十分!
今回も見応え十分!

平井和正「幻魔大戦」シリーズ、「ウルフガイ」シリーズ、SFアドベンチャー誌の表紙「美姫」シリーズ、新聞や雑誌、図鑑のイラストなどなど約260点。前回見た作品もありましたが、また再会できた喜びの方が大きいくらい。

今回特に印象に残ったのは戦争をモチーフに描かれた4点のオリジナル作品。「CHONG QING 重慶 1941(中国)」は倒れた人々を描き、「DAK TO 1967(ベトナム)」は戦闘中の兵士たちをガイコツに描き変え、戦争の悲惨さを伝えている。

…のだが、背景が宇宙だったり地球だったり、その宇宙も赤や紫、青など色鮮やかに描かれていたりするので、なぜか見入ってしまう。有り体に言えば「悲惨だが美しい」「残酷だが美しい」のである。

作品の一部には創作の元になった写真(戦闘ヘリの墜落事故)も並べられており、これらの作品が反戦の思いで描かれていることは間違いないのだけど、描き手が戦争を高みから否定するような位置ではなく、寄り添いながらも否定するイメージ。

あるいは、人間の愚行には違いないが人間が惹かれてしまう愚行の悪魔的魅力をも捕まえようとしているのか?

資料コーナーで紹介された、図鑑で臓器を描くため資料としたスケッチも印象深い。顕微鏡で実際にみたものをスケッチし、ここで感じた色彩のイメージが宇宙画などにも生かされたそう。

ゴルフ雑誌のイラストもそう。ラフに入ったボールのモノクロ画なんて、今ならデジカメで写真を撮ってフォトショでレタッチすれば済むような代物。それを手描きしてたとは…!

時代小説広告用の武将画はイラスト単体と広告として使われた例が展示された。広告の一部として(想像とはいえ)精密に描かれた人物画を見ると、むしろ単体として主張していないように感じられるのが不思議だ。だからこそ、発注も次々来たのかもしれない。

今回の展示会はぐっと地に足が着いた、注文を受けた画を描く労働者としての生頼氏の働きぶりを感じる内容でありました。前回大々的にフィーチャーされたゴジラもスターウォーズも、そして今回の目玉作の一つ「マッドマックス2」も地に足を着けた働きぶりの延長上にあったのだろう。

そして出口には来年12月に第3弾開催予定の告知が…!