苦労は表に出ない話【鑑賞「蛍の頃」】

宮崎市民プラザ・オルブライトホールであった劇団ペテカン公演「蛍の頃」見てまいりました。脚本・演出はペテカン所属で延岡市出身の本田誠人さん。延岡に実在したキャバレー「シスター」を舞台に、自身の祖父母と父親をモデルにしたノスタルジックコメディ。

キャバレーのママとして生計を立てる母親とそれを嫌ってきた息子。時は流れ、年老いた母は認知症の症状が見え始める…。過去と現在を行き来しながら親子の絆を描いた話でした。

ペテカンの役者陣の他に客演として県内在住の役者や、アニメ「ワンピース」「ドラゴンボール」などで声優を務める田中真弓さん、欽ちゃんの番組で有名な山口良一さんを招いておりました。

皆さんお疲れ様でした!
皆さんお疲れ様でした!

舞台のメーンはキャバレー「シスター」の場面(過去)。幕前で病院(現代)が演じられる構成で、賑やかでエネルギッシュな過去と静かな現代を対比させて話は進む。全編延岡弁ということなんだけど、ほぼ地元である我々からすると聞いてても違和感がない。あの田中真弓さんがしゃべるセリフもフツーに聞こえる(もちろん県外の人が聞くと訛りバリバリに聞こえるんでしょうが)。役者さんってすごいなぁ。

話が進むにつれ、賑やかでエネルギッシュだった過去は貧しさもまだ残る厳しい時代だったと描かれ、現代では息子は母の秘密を知る。一生懸命生きてきた一人の女性の人生が明らかになり、幕の前と奥で演じ分けられてきた現在と過去が交わる場面がクライマックスでした。

祖母と父親をモデルに孫が書いたのは、人知れず重ねているであろう親の苦労を慮った切ない話。ギャグも交えつつ最後はジーンとさせる、ウェルメイドな話でした。見終わったら「やっぱ、親は大事にせんとなぁ」と思うこと請け合い。「親を大事にしよう」なんてストレートに言葉にすると陳腐なんだけど、それを語れるのが芝居というフィクションの力なのでしょう。ちなみに終演後の挨拶で言われるには、モデルとなった本田さんのおばあさん、ご健在だそうですw。

「ペテカン」の公演を観たのは「青に白」「茜色の窓から」に続いて3本目。劇団20周年公演だそうですが、ホームページを見ると20周年公演第2弾も秋に計画されている様子。是非こちらも九州ツアーをお願いしたい所存です。