時間は流れ物語は止まる話【鑑賞・横山裕一×シュルレアリスム展】

吹き出しにさらっと惹句が入っているのが笑える…
吹き出しにさらっと惹句が入っているのが笑える…

男子中学生の落書きのような見かけに騙されちゃいかんですよ…

宮崎県立美術館で12月7日まで開催中の「横山裕一×シュルレアリスム」展を見てきました。

横山裕一は2歳の時に離れたものの、宮崎県都城市の出身。「ネオ漫画」を提唱し、キャンバス1枚でなく漫画のようにコマ割りした紙に何枚も書き連ねて不思議な世界の時間の流れを表現している。

会場では目の高さに原画が何枚も展示され、列車の旅や着替え、ちょっとした会話の様子などが描かれる。

インタビュー動画やパンフレットで述べていたのだが、作者が描くのは一貫した時間の流れ。映画や漫画のように次のコマやショットで翌日になったり過去になったりと時制を飛ばさない。

続けてみていくと不思議な世界が広がるのです。
続けてみていくと不思議な世界が広がるのです。

…のだが、1枚の紙にコマを割って描く漫画の特徴である画角の転換はある。急にドアップになったりローアングルになったりと作品時間内の視点は作者に委ねられる。そして作品を我々がいくら見ても、時間の進行はわかっても連続した時間を書くことで生じる(と、見る側が勝手に思っていた)物語がなかなか生じない。

見る側をかき回す、そんな作者の意図が思った以上に面白いんですね。絵心が中途半端にある男子中学生が描いたようなヘンな絵、世界観と組み合わさって。

初期の「トラベル」には擬音が全くなかったけれど、次第に擬音表現も作風の一部になり、吹き出しも登場し、描く人間も覆面をかぶったようになって抽象性が増す。最新作ではなんだかわからない箱や球体がシュルシュル、キィーンと飛び回っているだけ。そんな変化を見るのも興味深かった。

いずれにせよ1枚で完結するのではなく1冊の本で体感する作品だなと思い「トラベル」を買いました。「時間」を意識した作品群だからか、会場での展示スタイルも通常と違い、反時計回り。写真撮影オッケー(フラッシュ不可)なのも興味深い試みでした。間もなく終了なので、行ける方は是非会場へ…。キービジュルを見て「好みじゃない」って人もいるんだろうけど、ビジュアル1点だけでは伝わらない作品世界なんだよな~

写真 2014-11-29 15 07 45
大型パネルになった作品もありました