二度あることは三度はないんじゃないかという話【鑑賞・マレフィセント】

 

単独で見たら力作なのかもしれんけど、大ヒット作「アナと雪の女王」に続くディズニー作品という点を気にしてしまうと、評価を一瞬、保留したくなる作品。アクションシーンの迫力や主演アンジェリーナ・ジョリーのなりきりっぷりなど悪くない出来だとは思うんだが(たまたまかぶったんだろうけど)「アナ雪」の二番煎じ感はどうしても否めない。

もちろん「アナ雪」と作品上のつながりはないのだが、「アナ雪」は「雪の女王」、今作は「眠れる森の美女」と有名な童話を現代風に再解釈するという試みが同じなら…再解釈した結果まで同じだったってのはやはり大きなマイナスではないだろうか。

人間の国と魔法の国が隣り合う世界。魔法の国の最強の妖精マレフィセントは、人間の国に生まれた王女オーロラに呪いをかける。「16歳の誕生日の日没までにこの子は永遠の眠りに落ちる。目覚めさせるのは真実の愛のキスだけ」。しかしその呪いはオーロラだけでなくマレフィセント自身も苦しめることになる…彼女が呪いをかけた理由とは?

↑見てない人のためにあらすじの書き方がこんな風になりましたが、実際は「呪いをかけた理由」はマレフィセントの生い立ちと絡めて描かれるので、そこが話のポイントではないんですスミマセン。むしろ呪いをかけてからが面白くなる。今作は原作「眠れる森の美女」をマレフィセントの側から描いたような「新訳版」的な位置づけになるのでしょうか。

その結果、キャラクターの行動に一貫性がなくなっている面はある。原作では悪役だったマレフィセントが今作では悩み、迷う存在になっているのはそれがいい方に出たところ。マレフィセントを演じるアンジェリーナ・ジョリーの「アニメのまんまやんけ!」と言わずにはいられないなりきりっぷり。このキャラもいずれディズニーランドのエレクトリカル何ちゃらに出ること間違いなし。このキャスティングが成立した時点で今作の成功は見えていたんでしょうねー。「ルパン三世」はどうかなー(汗)

ただ原作を意識しすぎたのか、その矛盾が一気に出ているのが、原作でも今作でも見せ場のオーロラ姫の誕生を祝う場面。妖精たちがオーロラ姫に幸せの魔法をかけるのだが、今作では妖精たちの住む魔法の国と人間の国は対立している。そんな「敵国」で3人の妖精がフツーに来賓扱いされてるのはなぜ?魔法の国のリーダー的存在のマレフィセントと妖精たちの関係性も分からないし。

また祝いの場にマレフィセントも現れオーロラ姫に呪いをかけるのだが、今作ではこの登場場面、原作以上に大変な意味が生じているはずなのだが、誰もそれを指摘しない。この場面以降、王の立場がまったく危うくならないのもおかしいところ。

まぁ今作はこの場面以降、話の本筋はオーロラ姫とマレフィセントの関係に移り、その描写は役者の演技力で説得力を持たせた(アンジェリーナの目!)ので、観客は楽しめるんですが…先述しましたが主題の新解釈がね。古い話に新しい命を吹き込もうとするディズニーの意気込み、脇役キャラを魅力的な主人公に描き直す力量は感じたけれど、解釈のありかたはそろそろ工夫しないと、いくらディズニーでもさすがに飽きられるかもなぁ。