新しい市民モデルを考えた話

写真 2014-05-31 15 08 22毎月購読している雑誌「Voice」2014年6月号でちょっと覚えておきたい論考があったので、メモ。

東大社会科学研究所の宇野重規教授、同じく東大大学院の谷口将紀教授、ウシオ電機の牛尾治朗会長の共著「中核層の時代に向けて 自らの人生と社会を選び取る人びと」。

日本の将来像を見据える必要があるとして、これまでの「キャッチアップ」型近代化から、新たな社会像を「信頼社会」と定義しそれを担う「中核層」という概念を提示する論考だ。

今までの日本は一般的な社会的信頼が低いため、特定の組織(会社など)や関係(家族など)への関与を深めていた。しかし今や、大企業に就職しても定年までの雇用が保証されるとは期待していない。しかし組織の外に出るのもリスクが高い。結果、安定的な組織への参入競争が激しくなる一方、組織に残る人間も不満があっても外に出られない。

そこで真の意味での「信頼社会」実現のため、集団を超えた人と人のつながりを築かなくてはいけない。一人一人は生涯にわたって学び信頼を構築し続け、組織は主体的な人材によって自らを再編していき、グローバル社会での競争力を強化していく。そんな「信頼社会」で自らの生き方を主体的に選択し、それゆえに積極的に社会を支えようとする自負と責任感を持った人間を「中核層」とこの論考では定義した。

「中核層」は組織を上から指導するエリートとは違い、現場でイノベーションを実現する人々。また、イノベーションを起こすような人々を結ぶ人々、個人を支える医療、介護、教育者などをイメージしているという。

そして人と情報が集積する都市の発展が地域全体の発展につながるとするいっぽう、多様な個性と伝統を持つ地方の魅力を高め、都市と有効な相互補完関係を生むのが望ましい、と結んでいる。

長い論考ではないのだが、日本社会の今の問題点を端的にまとめ、目指す社会モデルを提示している。個人が目指すイメージ、社会として目指すモデルも自分の今の考えにかなりあっていた。

「中核層」たる個人をどう生み出し、育てるかがカギですかね。まずはどんな形であれ「自分の足で立っている」という自覚を持つ人々が増えることかな…

そこでもう一つ連想したのが、雑誌「The21」2014年4月号での日本中央競馬会・土川健之理事長のインタビュー。「運はどうすればつくのでしょうか」という問いに「自分に嘘をつかないこと」と土川氏は答える。

自分に嘘をつくのをやめて自分がやりたいことをやりたいようにやる。全て自己責任でやるようにすれば、結果はすべて自己の糧になりますから、アンラッキーということ自体存在しなくなるのです。

自らの生き方を主体的に選択するヒントがあるように思う。自分の生き方への肯定感をどこまで持てるか。ちょっと間違えると独善的になってしまいそうでもあるから、その点は要注意、要注意。